第二四五回 そして迎える、十三日の……


 木曜日! うむむ、金曜日ではなかったの。



 だから、アイスホッケーのようなお面はしない、被らない、素顔を覆わない。でも、口元マスクはするよ、電車の中だから。長期のマスクで、しかも午前の朝もそんなに遅くない時間だけれども、暑くて息苦しいから、某ロボットアニメのフェイスみたいになる。



 ドアの、窓に映る二人の顔。

 横並びなの、僕と太郎君……同じ場所に向かっている。それは学園。


 現在の、僕の学園。下車は『四駅しえき

 そこから歩くの、まっすぐ、ストレートに学び舎へと。


 太郎たろう君は、この学園の生徒ではないけれど、僕が誘ったの。男手が必要だったから。


 それに太郎君が、僕を問い詰めたから……


 梨花りかから聞いたと言っていた、だから……


 強引なところはあるけど、男らしく頼りになる。やっぱり僕は女の子。そんな太郎君にグッとくる。その手を繋ぐ、貴方は右に、私は左に並んで歩く。……歩いている。


 舗道の中心に、七十五という大きな数字。


 そこも歩くの、二人で。本当ならみんなで歩くのだけれども、梨花も可奈かなも……あとで来るって言うの。何でなの? ――それは、俺たちに気を使っているからだよ。


 と、太郎君は言う。


 爽やかなその表情で、マスクはもう外している。


 夏の午前に似合うの、その表情。例えるなら真っ青な空。とっても爽やかだ。


 その爽やかな空の下、会わせたい子がいるの。


 僕の……ううん、僕らの可愛い後輩。

 またまたううん、僕らの可愛い妹。もう遠くはない妹。


 太郎君も含むよ、僕らの中へ。太郎君の高校進学の志望校はね、ここだから。



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