第二二八回 さあ、出発よ! 僕らの夏休み。


 ――選ぶはそれぞれの道だ。今日はみんなで同じ道。



 芸術部、令子れいこ先生のもとへ集わんと。友よりも縁深し僕らは、いざ出陣へと。

 出発時、葉月はづきちゃんのパパとママ……笑顔で見送ってくれた、玄関に於いて。


 でもね、明日からは戦士の休日で……


 それでも葉月ちゃんは、令子先生と行動を共にする。すなわち令子先生は、百号のキャンバスの絵……『天使のうたたね』を完成させるべく、夏休みも学園へ来るという。



 葉月ちゃんは、きっと学校が大好き。


 以前の僕には、考えられないことだ。……でも、葉月ちゃんは学校に行きたいけど、病気のために行けない……行けなかったそうだ。僕は登校拒否の経験がある。とても恥ずかしいけれども、そんな僕のことを葉月ちゃんは『先輩』と呼んでくれる。


 素晴らしい後輩、可愛い後輩。

 僕を成長させてくれる、後輩……これからもずっと。



 葉月ちゃんは夏休みの間だけの、期間限定の部員で、僕らと同じ生徒ではない。九月になれば入院すると言っていた。何の病気かは……聞かされていない。きっと訊かない方が……或いは聞かない方がいい。そこから先は……まだ受け入れられないと思うから。


 今はまだ、想像したくない。


 そんな中だけれど、明日からは戦士の休日。僕らはなの。

 僕と梨花りか可奈かなは。


 ユニホームは体操服に定着。白い半袖と臙脂色の短パン。明日からはお休みを頂くけれども、十三日から来るよ、夏休みのクラブ活動。八月の二十四日が目指すところの、恒例の『ふるさと祭り』……僕らはまた、残していく足跡を、青春の一ページを今年も描いてゆく。シチュエーションは同じだ、クラブ活動。でも、また違うドラマの展開なの。



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