第二〇七回 葉月の訪問者。
――それは八月三日。八月最初の月曜日だった。
僕は、僕は駆け回る。
蛇口、水道の水……整理するとこうだ。蛇口が壊れて、二階の女子トイレの……
止まる方ではなくて、出っ放し。普通に捻っただけなのね、いつものように。でも噴水みたいになっちゃって、頭から水……被っちゃって、びしょ濡れ。上から下まで。
今年は特に猛暑……
暑い最中なので、気持ち良い……なんてことはなく、必死で止めようとするけど、噴水と化した水道、洗面所。そして僕の悲鳴が届いたのか「大丈夫か?」との、たまたま通りかかった……或いは駆けつけてくれた男の先生が二人。
「怪我はしなかったかい?」「は、はい」
「それでも保健室へ行った方がいいよ。念のため診てもらって、着替えもね。風邪ひくといけないからね」……「わ、わかりました」とのことで、僕はその場を後にした。
男の先生、二人ともカッコよかった。保健室では女の先生。「大丈夫みたいね」と、診てくれた結果だ。制服……びしょ濡れ。体操着を……僕の体操着を持ってきてくれた。
白いカーテン開けて、
梨花なら大丈夫なの、僕の心のケア……もしてくれるから。
――だから、もう大丈夫。
梨花が先に教室へ戻っても。僕も今行くの、教室へ。……ただ教室へ行くには、校舎が異なるの。緑の香り深き、中庭を通る必要があったの。僕は、見ることとなった。
そして、声をかけることとなる。
「大丈夫?」――と。
倒れている女の子。初めて見る顔で……泣いている。その傍らにはカラカラ……と空回る車輪。車椅子が横転していたの。名も知らぬ……葉月の訪問者との出会いとなった。
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