第二〇六回 そしてまだ、月曜日を迎える前に。


 ――語りたいことがあるの。



 それは何のため? それは、僕の中で整理したいから。


 例えば頭の中……

 ううん、もっと深い場所で、一歩間違えたら溺れちゃうくらい……



 それは、梨花りかのこと。何かにつけて僕は、梨花と比較してしまうの。……何でかな?


 きっと、僕が太郎たろう君に出会う前の梨花を意識しているから? 梨花はもう、自転車に乗れていた。梨花はもう、泳ぐことができていたの。……僕にできないことや、僕にないものをいっぱいいっぱい持っているの。それでもってカタカタと、弾くキーボード。


 すると、するとね、


千佳ちかだって、

 僕にできないことや、僕にないものをいっぱいいっぱい持ってるんだから」


 えっ?


 振り向くと梨花が、

 僕の打ち込んでいるエッセイの画面を……じっと背後から覗き込んでいた。


「お互い様だよ、千佳。

 もっともっと自信をもって。千佳はね、僕の自慢の妹なんだから」


 梨花は、とても明るい表情。

 吹っ切れたのかな? 爽快感がハッキリとわかる。その様なオーラ―を感じるの。


 いつもの梨花に? ううん、もっと素敵になった。


「僕もね、梨花は僕の自慢のお姉ちゃんだよ」


 向き直って、ギュッと引っ付くの。それで梨花は、


「あらあら、千佳はホント、甘えたさんね」


 それでもいいの。明日からはまた、登校日で……いつも通りの姉妹だから。



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