第百九十二回 ボヤッとした闇の中のはずだけれど。


 ――それが、肝試しのイメージ。



 例えば理科室など。夕方でもこの場所は、ちょうどいいほどに暗い。人体模型が見事に演出を施しているの。……梨花りかも、理科室という場所は苦手だったの。


 僕はてっきり、

 太郎たろう君がそこへ、連れていくのかと思っていたの……



 違ったの。想定外なの。


 それは思いもつかなかった場所で、闇の中とは無縁な、煌めく午後の日差しの中。


 二人の……そう僕たち二人だけの、

 教室という名のシチュエーション。それも放課後という場面だった。


 これって、

 これって、太郎君の演出? ……ううん、なんか違う。


千佳ちか……」


 と、いつもの太郎君とは違う、マジな顔。肝試しと同様に……ううん、別の意味でドキドキの展開を促されている、そんな様子だ。自分でも何を言っているのか……もう、何が言いたいのかわからなくなるほどに。語彙力が滅茶苦茶。……大丈夫? 綴れる?



 僕のエッセイ。このまま、このまま……


「えっ、ええっと、肝試しは? まあ、まあ……ここは太郎君の教室?」


 あ~ん、さっそく何言ってるの?


「ああ。千佳にとっては初めてだな。……平気か? この学校、千佳にとっては嫌な思い出があると思って、……その、悩んでいたのだけど」


「うん、平気……かな。意外と普通に受け入れられたみたい」


「じゃあ、大丈夫か……」と、意味ありげな展開。肝試しとは路線が違うような……



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