第百九十一回 それでもって、何処かへ。


 手を、手を繋いでいるの。


 行く先は?

 わからぬままと思いきや、見覚えのある風景へと映る。僕の瞳に……


 夕映えの空。

 いつからか、君と一緒に歩いた道。それが、この道だ。



 行く先は、何となく察しがつくの。


 或いはね、直感。

 だから問わない。太郎君とともに、僕は歩くの。……只々、それだけ。



 ――太郎たろう君は、

 白のカッターシャツに黒のズボン。クールビズ・バージョン。つまり学校の制服。


 僕は僕で白いブラウスに紺のスカート。これもまた制服。どちらも夏服……そうそう夏服と言いたかったの。そのワードは、今思い出したところなの。


 なぜ夏服?


 制服の話になったかというと、

 察しの通り、着いた場所が学校だからなの。


 学校は学校でも……

 僕の通っている学校ではない。


 過去の。思い出の中で通っていた学校なの。


 それでも、入学式から数えても一か月だけ。……登校していた期間は。小学校から続いてきた『いじめ』の延長。浸りたい思い出の風景なんて存在するのかな?


 そして、その問いに答えるように、


「肝試し。少しばかりの花火大会も兼ねて」


 と、太郎君は言うのだ。……あの、肝試しって、僕とっても苦手なんだけれど。



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