第百七十一回 ……初の試み。それは何時かではなく今でしょ。


 ――太郎たろう君は言っていた。



 相手の動きを観察中の大切なこの時に、何故だかふと思った。


 何時か決める必殺技……

 そう言っていたのを思い出した。……あの、それって何時かではないでしょ。


 今でしょ、今! との思いを、目力に込め、

 更なるアイコンタクト。訴えるその思いを。


 何故そう思ったのか? この場を借りて僕は僕に問う。それは飛び道具にあった。無数のハンマーが襲ってくる。今は……今は、その場を凌ぎつつ、攻めのチャンスを窺う。



 ハンマー使いは、どうやらティムさんのアバター。苦戦を強いられるのだけど、それよりも、もっと質の悪いアバターが存在し……それはそれは新一しんいちさんのアバターだった。


 何と、格ゲーでは考えられないキャラ。


 ジャンルを間違えたのか……とも思えるのだけど、いやいや間違いでもなくルール違反でもなく、それ以前にまだルールを定めている最中、このウメチカ戦は今回が第一回なだけにテストケースなイベントだったのだ。――それに関しては、また後に説明するとして……この試合の終了後まで。せめて決勝戦が終わって、その結果が明らかになるまで。


 今は新一さんのアバターの問題が先で、


 ……何と変形するのだ、戦闘機に。手足が出てきて中間形態もこなし、人型形態へとトランスフォーム。つまりは可変戦闘機というもの……いやいや、人型がメインと思う。


 これって、もはやシューティングゲームでは?


 でも人型形態の時は、通常の格ゲーのようにプレーできるし、厄介なのは機関銃と、ミサイルポットなのだ。……だとしたら、ハンマーとミサイルが同時に飛んでくるということになる。それらを一掃などとは夢また夢だけれど、一瞬のスキを狙って本当に、今の今こそ、必殺の『二人のハーモニー・高速回転キック』を決める時で間違いないと思う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る