第百七十回 ラスボスの風格。


 ――そのイメージではあるのだけど、対戦してみると……何というのか?



 貫録は十二分に、またはそれ以上だ。


 ただ……


 他のチームと対戦していた時の趣? 使っていたアバターとか? ……格ゲーという概念を根底から覆したというか、常識そのもの……少なくとも僕の持ち合わしている固定観念を崩すほどの自由な発想で、前代未聞という言葉が似合いそうな趣なの。


 アイコンタクト?


 ソーシャルディスタンスを保ちながら、太郎たろう君がこちらを見る。何か言いたそうな表情をしており……今の僕なら、読み間違えることななさそうで、それ自体が答え。



 ――ファイナル・アンサー。


 じっと見つめる太郎君の表情はまさに、それなのだ。……今はまさに、また緊急事態宣言が怪訝される見通し。なら、このウメチカ戦でも、この決勝戦まで無事に開催されたことは、本当に奇跡的なことなのだ。そして今、この場で……やはりラスボスの風格を持つパパたちと、こうやって対戦できることは稀。或いは素晴らしきことなのだね。


 ……そう。


 やはり太郎君からのアイコンタクト……という解釈で間違いようだ。



『ここは冷静に、相手をしっかり観察せよ』


 僕にそう伝えているのだ、太郎君は……


 二分五十秒……もしかしたら、通常よりもエネルギーを使ったため、それよりもタイムリミットまでが短くなった可能性があるにも拘らず、僕に、そう伝えてくれたのだ。


 太郎君自身もピンチなのに、この僕に……僕のために。


 ――だからこそ僕は見る。パパたちの、今使われているアバターの特性とやらを。



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