第百六十九回 そして今日、ウメチカの中心で。


 ――音は交わり重なり、お互いの存在を認め、時には競争しながらも和を重んじ、協奏している。やがて音は楽しみを覚え、今いるこの場所……ステージの上で共演している。



 初日はピット。二日目はブース。そして今、最終決戦ではステージとなる。


 恥ずかしながら僕は今……


 ウメチカの中心である『ウメチカ戦』のこの会場。さらにその中心に位置する、もう僕らが激闘を繰り広げている決勝戦のステージ。PS4・5は、今まさにプレーをしている人数分の四台。この度はタイマン……いやいや、マンツーマンではなくて、タッグ戦となる。つまり二対二……そうそうペアー戦なのだ。天空からは、それよりも多くの……幾台にもなるスポットライトが、これまでの……そしてこれからの、僕らの激闘を照らしているのだった。その存在……それに関するスタッフ達に、初めて感謝するのだ。


 ウメチカ戦は、


 この場のようで、この場に非ず。……もっと前から、℮スポーツと呼ばれる前の、そんな前から。スクールカーストが過去のものとなった今、僕は縁するすべての人たちに対して感謝できるようになったこの境涯に、僕は心から感謝する。――それが、それこそがウメチカ戦へと繋がる道だったのだろうか? なら、感謝に尽きる。


 あなたたちに出会えたこと。


 目の当たりの、そして僕らと同じ決勝戦のステージにいる二人のパパ。……あなたがいなかったら、僕が誕生しなかった新一しんいちさん。ほっておいたら一家心中にまで追い込まれそうな……道を外しそうになった僕とお母さんを救ってくれたティムさん。



 そのティムさんに出会えたことで、


 奇跡的な……いや奇跡ともいうべき、かけがえのない家族の絆を繋ぐことができた。


 だから僕は、あなたに対して全力で、勝利を頂くよ。――それは僕の、僕らの未来のために。それはまた未来で行うであろう、僕と太郎たろう君の『愛の共同作業』の意を込めて。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る