第百四十二回 梨花はもう、理科から逃げない。


 ――前回に引き続き、お話も引き継いでいる。それは、りかのじかん。から。



 お誕生日、そのパーティーの前に、立ちはだかる中間考査。……そう、僕らだけではなく、令子れいこ先生も絵を描くことに夢中で、うっかりしていたと、そう言っていた。


 そして今日、前触れもなく突然の試験が実行されるという。


 クラスの一握りの生徒からはブーイングもあったけど、ほとんどの生徒は「はい、そうですか」的な即OK型。……ということは、みな優秀ということを謳っている。


 平生お勉強をしていたら、

 何も焦ることはないという立派な見本で、僕も見習わなければと思う次第で、


 ――そんな傍らだったの。梨花りかが……

 梨花が自発的に、理科のお勉強をしているのだ。その有様を目の当たりにし、


「う、嘘でしょ?」


 と思わず声にして、物を落とすなどして驚きを、全身で表現する可奈かな……だけれど、嬉し涙? その様な表現も垣間見える感じの……って、梨花って、そんなに理科が苦手というのか、嫌いだったの? と、僕は……僕は可奈に問う。すると、その答えは、


「おええーっとなるそうなの。今思えばね、梨花も必死だったんだね」


 と、しみじみ……と、可奈は語った。


 この距離なのに、その会話……僕と可奈の会話は、梨花には届かずで、かなり集中しているようだ。教科書やノートを視界の中心とし、怖いくらいの眼差しで、とてもとても声などかけられない様子だ。もうすぐ試験が始まるのだが――ちょうど理科の試験だ。


 すると、そんな刹那。


 梨花は急に立ち上がって……って、顔が真っ青? 駆け寄るといっても傍らの、すぐそばだけれど、僕は可奈と一緒に「大丈夫?」と声をかけるが、梨花は口元を手で押さえて教室から出て……トイレでリバースだ。そのまま時が訪れて、梨花は……保健室へ行くこととなり、僕と可奈は教室で……そう、梨花の分まで理科の試験を受けることとなった。



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