第二十七章 令和二年七月六日を祝して。

第百四十一回 まずは、その日について。


 ――バースデー。その日の食卓には……そう。バースデーケーキ。


 ちょっと、

 ちょっとその前に。母国語なら『誕生日』とも言う。


 それは僕の、

 そして梨花りかの……本当の誕生日。ともに十四歳を迎えた。中学二年生の十四歳。


 以前なら、梨花の誕生日は八月二十四日……僕と被らないようにするための、偽りの誕生日。十三歳までは、その誕生日。……新一しんいちさんが、そしてお母さんが、僕らのためにそう決めたこと。……でも本当は、それは建前で、あなた方の都合でそうなったのでは?



 所謂『世間体を気にして』というもの。


 だけど、だけれど……もういいんだよ。あなた方が僕らの実のご両親で、ティムさんという新たなパパ。美津子みつこさんという梨花の育てのママも一緒に、これからは大家族。


 かの国民的なご長寿アニメのように、

 それはそれは、僕の長きに渡る憧れだった。――それが、もうすぐこの手の中へ。


 そして八月二十四日は、

 令子れいこ先生のお誕生日で、僕らは是非とも祝ってあげたい。あの芸術棟のアトリエその場所に於いて、ジュースで乾杯。題して『天使のうたたね』が完成すると言っていた。


 そしてそれは、

 毎年恒例の『ふるさと祭り』で、飾られることとなる。


 ちょいとその前に、

 まずは七月六日のことが先で、


 梨花の……とある小説サイトの『書くと読む』その初投稿から一年。梨花から僕へと繋がる物語も、今日でちょうど一年となり……一周年のアニバーサリーを記したのだ。


 それは僕の番。つまりは僕の役目だ。


 そして梨花が今、逃げ出すほど苦手だった理科のお勉強に……挑戦しているのだ。



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