第二十六章 思えばプリンセスもボクッ娘で、三人揃えば。

第百三十六回 まあ、何がともあれ。


 ――今はもう、芸術棟ではなく教室。僕らはいる。教壇には令子れいこ先生もいる。


 ホッとする。

 僕と梨花りか、お互いの顔を見ながら安堵の息を吐く。


 その理由とは? 今こうして無事に行われているホームルーム。そこに至るまでの過程を述べることに存在する。まずは今、令子先生が身に着けている半袖の体操着と、臙脂色のジャージの下は僕が貸してあげたもので……サイズは、何とピッタリだった。


 僕の身長は……百四十三センチ。胸のゼッケンは『星野ほしの』……で、令子先生に貸してあげた時に「あっ、それ僕の」と、梨花は言っていたから、つまり梨花のものだ。


 ――で、クラスの面々の反応と言ったら、

「似合う!」と、口を揃えて言うのだ。こうなると、生徒と先生の区別もない。


 ……そうなの。僕がこの学園に転校してから、休校の三か月を含めてだけど、もう十か月になる。だけれど、この学園にはスクールカーストなんて存在しなかったの。いじめもない……そう断言していいよ、って、令子先生は言っていた。


 僕は怯えていたのは、

 ……もう過去のこと。脳内に宿っている記憶……それがフラッシュバックしたも

の。


 自分でも、思考するよりもずっと……だけどね、

 令子先生は「それも解決しようね、僕と一緒に」と、言ってくれた。


 その時はまだ、教室へ来る前の――


 ありのままの姿。何も身に着けない姿が……「心底から描きたいものを描いている時の自分のスタイル」とも言っていて「濡れた服と下着は……一階にある洗濯&乾燥機に入れてあるから、ホームルームは君たちに任して、このまま描いちゃおうかな、鏡に映した今の僕の肖像画……」なんて言うから――「駄目です! あなたは先生なのですから。僕らと一緒に行きましょう、教室へ。ホームルームへ。そしたら後でね、令子先生が心行くまで、僕たちのことを描いて欲しいのです。僕と梨花の十三歳の記念を」


「いいの? 本当に」という令子先生に対して、僕と梨花はこくりと頷いた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る