第百十七回 これは、もしかすると。


 ――あらすじ?


 この度の八万字コンクール応募用で『ウメチカ』専用の?



 スマスピ(スマホで設定したスピーカー)からは、梨花りかの声……風景に乗じて奏でられているのは、梅雨と呼ばれる雨音と、ノート型PCから響くファンの音。


 それくらいに静まる刻。


 そのため……ふと睡魔が襲う最中であったとしても、


 完全には落ちない! フォロワーさんや、様々なライフラインを駆使して、僕なりに調べてみた結果だけれど、年々『書くと読む』のクオリティーはどれも高くて、高校受験の戦争をも余裕で遥かに上回る手強さ。故に油断などできるはずもなく、それどころか梨花も、前回の十万字コンクールでは、多数の通過者がいたとしても一次にも掠らず、ダメ元と言いながらも笑顔を振り撒いていたけど……きっと、泣いていたのだと思える。



 ――悔しくないはずないよね?

 一生懸命だったもの。


 無理に笑顔なんか作らなくていいんだよ、思いっ切り泣いても。



千佳ちか、コピペしたんだね』


「あっ、うん、二行開けて、『十万字までのあらすじ』と明記してから一行の空白……

 そこから、梨花が語って僕が打った文面を入れたよ。梨花も、りかのじかん。八万字コンクールにエントリーしたんだね。僕の新章たるウメチカ! と同じ感じだね」


『うん、お揃いだね』


「ありがと、お姉ちゃん」


 僕にとっては初めてのコンクール。℮スポーツとは違う分野への挑戦だ。……実はこの日、お姉ちゃんがエントリーしていることを知って、グッと心強くなるのを感じた。



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