第二十三章 水無月は、重なるアニバーサリー。

第百十八回 水無月は、やっぱり水色。


 ――とある土曜日。青空でも、翳りのある空。



 締まる肉体……マクロながらも日々成長をする。今日もジョギングを行ずる。


 水無月より学校が始まってから、毎日はしてないけど土日がメイン。祝は暦上まだなくて、あったらきっと行ずる。平日でも稀に早朝……まだ夜が明けたばかりの刻に行ずることもあった。その回数、たぶん二回ほど。


 たまには違う空気と、違う景色と……


 コースを変えてみた。いつもならカントリーロードだけれど、今日はリトルにアーバン風な趣。ビッグリバー横断する道路を兼ねた橋の上を駆け抜け、下る下る坂道を……気紛れなマイロード、たまにはいいでしょ、との思いで通りかかるデパート……とは程遠いけれど、スーパー。そこで見かけたの、水無月を彩る水色なお花。



 ――紫陽花を。


 僕は「これ下さい!」と、お空と対照的に一片の曇りもなく、声高らかに店員さんに告げる。……それは、ある種の告白。一目で心奪われ、今は胸へと抱擁し、


 ――駆けるに走る帰り道。


 きっと、きっと大好きになるよ、僕と同じでパパもね、紫陽花さんを。


 翳りある空、ついに雫となって、

 昨日の夜と同じくらいの激しい雨となって、僕と紫陽花さんを濡らす。しかしお家まではもうすぐで、止まらず退かず雨宿りも要せず、僕は一気に駆け抜ける。


 大自然のシャワー、とっても心地よくて……


 そしてお家の前で、「あれ? 太郎たろう君」……が来ていたの。


 太郎君は「おいおいずぶ濡れだな、その紫陽花も……千佳ちかって、観葉植物とか興味あったっけ?」と、僕と、その紫陽花さんを見るなりそう言って……


「雨だし、ここじゃ何だからお家に入ろっ、太郎君」と、僕はこの上なくにこやかに。



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