第百十五回 ナイトコールは、オブラートに包んで。


 ――オブラートに包むから、『とある夜の出来事』ということにしてほしい。



 着信は、エブリの『カントリーロード』を奏でる。僕のお部屋にて、スマホは畳の上をダンスする。今宵の、涼しい感じに合わせたように、大人しめのダンスを披露……


 明日は学校だから、ミッドナイトの域は避けてくれたようで、


 ……ということは、学生=同じ学校=同じ学年で同じ学級で、表示を見ると、やっぱりやはり、きっと出るまで着信は続くので僕は出る。


梨花りか、どうしたの?」……と、言うまでもなく、画面表示も『梨花』だった。


千佳ちか、今PC起動してる?』


「うん、してるけど?」


『今から僕の言うことを、言った通りに打ってってほしいの。急だけどお願い』


 ……まあ、いつものことだけど、

 もう慣れっこだ。僕はスマホの音声をスピーカーに設定し、PCも準備OK。



 ――梨花は、静かに語る。


 このお話は、とある小説サイトの『書くと読む』で、僕と同じようにエッセイの連載に挑戦している、僕の分身ともいえる、もう一人の僕のお話。


 一人称は『僕』でも、僕と同じJC……つまり女の子だ。


 僕と出会う前のその女の子は、学校では虐められ、お家では母子家庭。たった一人の親なのに……お母さんとの関係も険悪。お家を飛び出したその日は十三歳の誕生日。


 彼女の名前は千佳。曇る瞳で、明日へのヴィジョンも見えずに『ウメチカ』という場所を彷徨って、心病む末に倒れた。そんな彼女を助けてくれた人……それが、新しいパパとなるティム・ウメダさんとの出会いだった。その出会いが、千佳の運命を大きく変え、


 ――そこからが新章!


 タイトル冒頭の『新章たる』は、そのことが由来なのだ。



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