第七十三回 ……でね、パクパクの次は、パクパクマンなの。


 ――満腹に満喫。



 今この室内には、まず……訳ありの店長代理のパパ、そして僕と太郎たろう君。二人の世界へと至るデートの最中だけれど、周囲を……辺りを見渡した。


 此処は『海里マリン』という喫茶店。またの名は……つまり通り名は『五番町のマリ』と、そう呼ばれている。でも、もう、マリさんは籍を置いてない。



 ――マリさんこと、早坂はやさか海里かいりさん。


 誕生月のエイプリールを迎える少し前に、辞めた。アルバイトを辞めた。


 この度の新型ウイルスによる打撃は、外出自粛だけでは済まずに……この状況を作ってしまった。マリさんだけではない、川合かわい未来みらいさん(男性)もだ。そして凡そ一か月後に当たる六月二十日をもって、喫茶『海里マリン』は……閉店となる。



 苺からバナナへと二種類のパフェを堪能し、その次は、インベーダーゲームでもお馴染みの、液晶画面がテーブルとなったゲーム機。その内容は『パクパクマン』


 連なる●を、ニコちゃんマークみたいなものが、文字通りパクパクと、ゴールに向かって食べ進むというゲーム。そして僕と太郎君は向かい合わせに、この店特有の……つまり特別モードの『ラブモード』が体験できる。画面中央がゴール。二体のパクパクマンが障害物や敵などを乗り切り、連なる●を食しながら、キスをするというもの。


 そのプレー中に……その、パパに訊いたものだから。


「お客様いないね」って……パパに訊いたものだから。そのことを知ることになった。


 あまりの衝撃か、僕は自分がどのようにパパに訊いたのかは……真っ白。つまり思い出せないのだ。今後どうするのかは、……皆交えてお話する、そのような運びとなった。


 だからこの日、ジュークボックス風なカラオケで歌いまくった。――カントリーロード他、エブリメドレー。何と僕と同じく太郎君もエブリ大好きで、パパも一緒に熱唱だ。



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