第七十二回 やっぱりデートは、


 ――少しでも長く一緒にいられること。



 実はね……


 太郎たろう君が来る四十五分前から、バス停にいたの。彼とは再会した身だけれど、デートは初めてで、溢れる想いはお家の中では収まらずに、この場で思いっ切りな想像を、この大空のように広大なまでに膨らまして、果てしなく。


 そこでもう一つ、実はだけど、


 昨日は現地集合って、太郎君からメールで……


 僕――女の子だよ。

 場所は知っているけれど、そんなの冷たすぎる。


 ……グスッ。


『やだやだ! 僕一人じゃいけないもん。せめてバス停! 僕と一緒にバスに乗ってくれなきゃ、シクシク……泣いちゃうからね。それからパパ特製の苺パフェ、食べようね』


 と、そんな具合で甘えてみた。あくまでメールでだけど……


 すると、するとね、――返事、来た!


 OK! 可愛いね、千佳ちかちゃん。――まあ、可愛いだなんて、ちゃん付けだなんて。


 えへへ……というような、笑い込みの心境。



 そして今! 僕と太郎君は、この場にいる。


 そして、目の当たりには……苺パフェ。向かい合わせの間の透明感あるテーブル、その上に。……食す食す、お喋りよりも食べるのに夢中、二人とも。どことなく食べ方まで似ていて……ご想像にお任せしますが、ムシャムシャよりもガツガツ行く方なので、


「おい千佳、もっと味わえよ。せっかく御父様が作ってくれたんだろ?」


「太郎君もでしょ? パパ特製の苺パフェの後にはね、バナナパフェもあるんだから」


「……って、おいおいまだ食べるのか?」と、DXデラックスな『三時のおやつ』となった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る