第十四章 そしてイメージは現実へ。二人の新たなる章に歩みを入れる。

第七十一回 まずはダブルUTから、


 ――ダブルUTは二つの由来。二つの物語の巡り合わせで成り立つ。そして二つの物語はコラボして、運命の一つの物語を仕上げてゆく。……二人の場合は、


 ℮スポーツ!


 そのためのお話。ゆっくり会うことが、未来を築くことになるのだ。



 UT、それは『ウルトラ・タロ』……霧島きりしま太郎たろう君のアバターの名前。見た目は『新型ウルトラマン』で、衝撃ソニックの拳や夏潮サマーソルト蹴りなどの光線技が特徴。弱点は未だ不明だ。


 UT、それは『ウメチカ』……梅田うめだ千佳ちかのアバターの名前。見た目は『僕に激似なセーラー服少女』で、特徴は無数の筆ペンとボールペンを繰り出し、弱点はね……


 内緒! 女の子には秘密が多いの。


 二人とも『書くと読む』の登録名&PNペンネームとは共通。NSネーミングセンスが乏しいのも共通点。そんな二人がデートの名のもとに、午後三時の穏やかな刻に、此処『海里マリン』にて集った。


 新型ウイルスの波が緩和するとともに、


 外出自粛に続いて、人との接触の規制をも緩和……そんな少し未来が舞台だ。大好きな人の傍らにいる。それは当たり前のようで、実は尊いことだと今になって思う。



 ――この日、もう五月も半ば。


 僕のボクッ娘は変わらないけれど、朝も早くから『おめかし』というものを、僕に施してくれた梨花りか可奈かな。その間の僕はまるで二人の人形だったけど……下着からお洋服、純白な長袖ワンピース、深紅なポーチまで。髪も、いつものボブからスタイリッシュに。


 ファーストラブ・フォーエバー。


 そのことをきっかけに、僕はね、やっと女の子としての自分を好きになれた。そして待ち合わせ、とあるバス停。今日の僕に太郎君はビックリ。……程好き日差し、穏やかな風をも素敵に彩る午後三時。照れながらも「綺麗だね」と言ってくれた太郎君。


 ――バスの中でもお隣、すぐ傍らで、さりげなく手を繋ぐ。頬を少し赤くしながら。



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