第七十回 きっと結成前日! 五月晴れのUTペア。


 ――もう皐月、そして僕は五月晴れの日々を待ち侘びている。



 君に、

 あの日、君が言っていた。



「今度はゆっくり会いたい」と。それから「君が教えてくれた『海里マリン』という喫茶店へ行こう」と。梨花りかも一緒にいたから、てっきり可奈かなも呼んで「みんなで行こう!」と、言ってくれるのかと思っていた。……パパは今、訳ありて店長代理。ジュークボックス擬きなカラオケマシーンも充実しており『エブリメドレー』を合唱しようと、密かなるイメージしていたのに……それなのに梨花は、梨花のお言葉は、そうね、お言葉はね……


「二人で楽しんどいで」


 ……だったの。せっかくゲーム機の『パクパクマン』だってあるのに、僕は格ゲーまたは℮スポーツ専門だけど、可奈が自粛規制の前、つまりは『ひなまつり』の前まで、楽しそうにプレーしていたのに、梨花はあっさりと、その一言で片付けてしまった。



 ……で、コソコソッと僕の耳元、


「梨花はな、

 俺たちに気を使ってくれたんだよ。二人だけのデートをな……」


 と、太郎たろう君は言う。耳はちょっと弱くてくすぐったかったけど、ボン! と、炸裂する頭の中、そして赤面を晒すことに。胸ドキドキと、瞳が潤むことも感じ取れる。


「ちょ、おま……そんな目で、しかも上目遣いで、俺を見るなよ」


 赤面晒し、もう一名追加の瞬間だ。――だって、僕よりも多分……十センチ以上も高い太郎君の顔を見るのに、どうしても上目遣いになっちゃうの。恥ずかしいけど、僕の顔をもっと見てほしい。そして、もうすぐ……ウメチカも僕の氏名も、頭文字は……ローマ字ならばUTウメダ・チカとなる。これでダブルUT、『UTペアー』がイメージできるのだ。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る