第十三章 あの頃の初恋は今、さらなる進化を繰り返し。

第六十六回 そしてまた、……お話も進化を繰り返すの。


 ――どうにも止まらなくて、やや強引ではあったが、太郎たろう君をお家に入れた。


 なぜなら、近所の目がある。



 特に可奈かな。僕のお家から二軒目。……今、彼女に太郎君のことを知られたら、色々とややこしくなるのは火を見るよりも明らかで、間違いなく彼の妄想を、融通もなく聞いたまま周囲に広めることになるだろう。そうなると、……そうなると収拾もつかず。


 太郎君はね、……あのね、


「結婚しよう!」とまで言ったの。でも、……でも「僕たち、まだ中学生だよ。まだ十三歳。僕が結婚できるまで、まだ三年もあるよ。……あっ、でもでもでも、太郎君はまだまだだよ、男の子は十八歳だから」――と言ったら太郎君、やっと僕の話を聞いてくれたみたいで「そんなのに負けないぞ、俺の愛の方が二億四千万倍も強いんだからな」


 ……ああっ、もはや常識が通用せずに、


 もう手に負えないほどに、お話も飛躍しちゃって、


『ダブル・ボクッ娘パワー』で、何とか近所の目を避け、お家に入れただけで精一杯。それ以上を求められるともう……脳から湯気が出ること必至で、僕も梨花りかも天手古舞。なす術はないのだろうか? その場しのぎでもいいから――と、そう思い始めたその時、僕ら三人の前を……つまりは玄関から室内へ二または三歩の処、ヌッとパパ(ティムさん)が立ちはだかる。その姿を見るなり、僕は言うのだ。


「パパ!」と。――すると、するとだね、


千佳ちかさんのお父様で御座いますか」と、頭を深々下げて太郎君……で、また頭を上げるなり次なる台詞を「千佳さんのことはこの僕、霧島きりしま太郎にお任せください。必ずや、貴方様の娘様を何があってもお守りし、世界で一番の、幸福者と仕立てて参ります」と。


 えっ、えっ、ええっ! これって、まるで……


 微笑む。……パパは微笑みもって、


「千佳のこと頼むよ、仲良くしてあげてね」と、それはそれは普通の言葉だった。



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