第五十八回 その企みとは?


 ――たとえば、


「飛沫とはいうものの、未だ宙を漂うウイルスの殺菌……ううん、除菌とか。僕らがお外からお家に帰って来て、手洗いうがいするように……僕の場合は、すぐにシャワー浴びて浴室で全部済ましちゃうけど。そのように、折角の外出の自粛を促しているのだから、町中を……その、クリーニングしちゃうとか、何で考えないのかな? ……とか思って」



 頭の中にはイメージ、


 閃きと思ったのだけど、いざ言葉にしようと思うと難しくって……いやいや、それ以前に、エッセイにしようと思っても……もっと難しいか。


 ……それに、それにね、


 可奈かなも、梨花りかも見ている、メッチャ見ている。きっと、稚拙極まれりだ。


 ワクチンだって、まだ研究中だものね。

 ……そうだよね、そんな簡単にいかないよね?



千佳ちか、それエッセイに書こうよ」


「えっ?」


「思いつかなかったよ、あなたなりに考えてたのね」


「えっ、えっ?」


 梨花も可奈も、大いなる反応! もしかして褒めてくれた?



「僕ね、℮スポーツで千佳が天狗にならなくても、千佳はすごい子なんだよ。僕の知らないこといっぱい知ってるし、僕よりも辛いこといっぱい経験してきたのに、とても優しい子だし、とっても強い子だから、……初めて喧嘩した時ね、千佳にもっと自信を持ってほしかったんだ。だからね、それをわかってほしくて、あの時は、きつく言ったんだよ」


 ――その梨花の言葉こそ、大いなる企み。……そう、僕のために。



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