第四十四回 帰宅。今はまだ午前の風。


 ――ビッグなウインドウ、カーテンを靡かせ春の風をも、僕は招き入れる。



 来るもの拒まず、去るもの追わず……


 もう確信する! 繰り返さない過去、その翳りをも。――「僕」はもう「私」と呼べる自分に戻れないと思うけど、それでも構わない。可奈かな、そして梨花りか、この二人を拒むことなく招き入れた。……百合とも区別もつかないけれど、とても大切な関係だ。


 僕は、きっと、

 お友達の域を超えてでも、この二人が愛おしい。



 だからもう、……お母さんを拒むこともないよ。


 僕はお母さんの思うようないい子ではないけど、


 ……僕はね、お母さんに、いつまでも元気になってほしい。でも僕は、口下手で呆れるほど不器用で、嫌われていたのかもしれないけど、それでも、僕はあなたの子供……


 それだけは、

 そのことだけは、何も変わらない。……あなたのことを、僕は大切に思うから。


 だから、

 だからね、可奈と、梨花も一緒に同じ部屋で、


 PS4・5を起動! お茶の時間ティータイムの傍ら、可奈の久しぶりのマシンガントークを中心として、次なる戦いに備える。『格ゲーのキングキングス』を決める選抜戦。そのための特撮ヒーローなどでよくあるバージョンアップ。その要領とはPCと同じと、可奈は危ない程の笑顔で言う。――三本の矢とも称するキャラたち。僕らのアバターだ。



 イエローは僕、「CHIKA」と名付ける。「黄色い悪魔」と呼ばれるように。


 ピンク改めレッドは梨花、「RIKA」と名付け……って、もっとアレンジ溢れる名前はなかったの? 武器は斧、「アイアンホーク」と名付ける。そっちの方が良いと思う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る