第五章 そして、青春へ。

第二十一回 父と娘、姉と妹。


 ――前回のお話より、本日お泊り確定! 四棟三〇三号室……『星野ほしの家』



 そのお家と僕との関係……それは、友人宅。それだけではなくて星野梨花りかは、僕のお姉ちゃん。双子の……更に、梨花のお父さんは、僕の、本当のお父さん。


 ――僕と、血の繋がりのある実の父。


 そして十三年間、お母さんを一人ぼっちにした男。忘れられた存在……とは言わないけど、僕のこともほったらかしにしておきながら、別の幸せな家庭を築いている。


 僕には……

 ティム・梅田うめださんという『パパ』はいるけど、お父さんを知らずに育ってきた。


 今、同じお家。――同じ三〇三号室に、

 僕がこれまで知る由もなかった『お父さん』がいる。……お父さんがいなかっただけではない。お父さんという存在、お父さんとは何か、そのすべてに於いて知らなかった。


 僕は、お父さんのことが好きか?


 それとも十三年間に対して、お父さんを恨むのか? お父さんが憎いのか?

 それは梨花に対しても同じ。……嫉妬の心? それとも、羨むのだろうか?


 それは、――それは、自分にもわからない。


 きっと、どれも当て嵌まらないような……そのような感情だ。ただ、ただ今は、梨花のお母さんとお話をしている。所謂いわゆる世間話せけんばなし……雑談とも言う。されど楽しいの。


 玄関の傍らに位置する梨花の部屋を出て、奥の方へ。


 羨ましいといえば、この三〇三号室の広さ。僕のお家よりも広い。そんなことを脳の片隅に置きつつも台所、テーブルを囲みながらお茶を呼ばれる。弾む会話の数々……と。


 可奈かなのマシンガントークにも勝る、僕と梨花のお母さんとの会話。

 ――三時の奥様会話にも似た感じ。


「ほんと千佳ちかは、ママさんトーク得意だね」と、梨花。


「ほんと学校では見たことのない一面だね」と、可奈……二人より、ご感想を頂いた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る