第二十二回 今宵は、夢の共演。


 ――十三日、しかも金曜日。


 ホラーを連想するには充分な演出。僕は、僕はね……パジャマを着て、枕も抱えて、



 襖を開ける。そしたらね、……そしたら、


「パパ、怖いの……一緒に寝ていい?」と、可愛く言うことがポイント。


 パパとはいっても、ティムさんではない。ここでは『お父さん』……新一しんいちさんの方。


 そうだねえ、その筈だったけど、着ているものはパジャマだけど……あの、迷彩色。


 ――似合わない。


 というよりも、そもそもそんな気もない。今はもう、とっくに家路を済ました可奈かな。忘れかけていたけど、休校だから今日も休みなわけで……学生の本文は勉強ということには何も変りはなくて、塾に代わってスパルタママが待っているからと、そう言っていた。


 ほんの束の間だったけど、


 楽しかったよ、可奈がいてくれて。ありがとう、付き合ってくれて……その分、僕はエンジョイするよ。あの夏の日の三人で行った温泉。それ以来の裸の付き合いも満喫、お風呂場で梨花りかと一緒に洗いっこ。細部に至るまで……今宵だけは独り占めだ。


 だけど、心配はいらないよ。


 百合百合のように見えても、僕らは実の姉妹。普通にスキンシップしているだけ。



 と、まあ……

 それだけが夢の共演ではなく、ここからだ。


 気付けば、もうシンデレラの時刻は過ぎてしまって……十四日の土曜日を迎えた。


 ホラーの欠片もJソンネタも幻と消えたが、――二人共通して珍しくも、現場ではなく和やかな書斎で行われるエッセイの執筆。PNペンネーム『りか』の書斎、つまり梨花の部屋。


 あっ、そういえば今日はホワイトデー。三月十四日。


 ――チョコあげたから、両パパから貰えるね、僕と梨花のバレンタインの御返し。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る