第四章 春先へ、歩み寄る少女たち。

第十六回 今ここから!


 ――ここは部屋の中。つい二か月前、僕は生まれて初めて自分の部屋を持った。



 パパは言う、


千佳ちかももうお年頃な女の子、自分の部屋くらい持たなきゃ」と。……僕ではなくて、お母さんに言うのだ。そのため、十三年間のほぼ最初からと思われる、くどいようだけど住み慣れたボロアパートを出る。そのことにより、もうそこには誰もいなくなった。



 今はもう、春先に行われる取り壊しを待つだけとなる。


 そのためもあったのだろう、僕たち家族は新居に移る。……そこは、前のボロアパートよりも少し、最寄りの駅から離れた場所。とはいっても、徒歩十分以内に収まる。


 そして何と!

 梨花りかのお家へ、ググッと近づいたのだ。


 ドラッグストアーの裏手にある住宅街、小規模だけど、そこが新居。梨花のお家に行くには、ドラッグストアーよりもまだ向こうの、道路を超えて公園へ……そこに聳え立つ公営住宅の四棟、そこの三階だ。


 今日もまた、訪ねる。

 今日もまた平日だけど、……実は三月三日より休校となっていた。今のところは、まだ見通しはないけど……ニュース通りなら、三学期から春休みの終わりまでのようだ。


 僕はまだ、半年も通っていない。

 転校する前の学校と、今の私立大和やまと中学・高等学園を合わしてもだ。


 ……でも、


 転校する前とは違って、今はお友達がいる。――クラスのお友達。中学二年生になっても梨花とは同じクラスで、また可奈かなとも一緒。先生……担任の先生は、令子れいこ先生と、


 ――これまでなかった感覚だ。


 まさかの『新学期が、学校が待ち遠しい』なんて、そう思えたのは、初めてだった。



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