第五回 それは、出会い話から。


 ――ここは? それでもって貴方は?


 頭の中でワードは浮かぶけど、思うばかりで声にはならずで……そうこうしていると、


「シンパイナイヨ、ワタシハココノジュウギョウインデ、ココハキュウケイシツダカラ」


 と、その男の人は話しかけてくる。


 見た目は……三十代かな? 黒縁眼鏡のシャープな顔、背は……まあまあかな? 百六十五センチほど。中肉中背……肥満でもなく痩せているでもなくで、やっぱり普通……。



 それもそうだけど、

 それどころではなくて、今の状況。


 畳の間、卓袱台ちゃぶだい、僕は布団の中で……あれ? 慌てて上半身を起こすと、


「アッ、マダネテナキャ」と、男の人は言うのだけど、その言葉も右から左で、それどころではなくて、上布団が捲れると素肌が……な、何で裸なの? と、声の代わりに、キッと、その人を見る。ササッと、上布団で体を隠したのは言うまでもないことだ。


「……ゴメンネ、キミノカラダガヌレテテツメタクナッテタカラ……。オヨウフクモヨゴレテタカラ、アラッテカワカシテルカラネ……」と、片言の上に、詰まり詰まりの言葉。


 ……でも、


「僕をどうするの?」と、訊いてみる。


「オウチマデオクッテアゲルヨ。キミ、ナンダカワケアリノヨウダシ、ワタシデヨカッタラ、ソウダンニノッテアゲルヨ」と……答える、その人は。――取り敢えず、僕の言っていることは理解しているようだ。僕も、この人の言うこと理解できる。……でも、初対面なのに、どうして僕に優しくしてくれるの? 何かあるの?


 じゃあ、


「貴方は? お名前は何なの?」と、まずは自己紹介だね。


「ワタシハ、ティム・・・・ウメダ」……間髪入れずに名乗った、この人は。


「……キム・・、さんね。僕は千佳ちか星野ほしの千佳、よろしくねっ!」と声も高らかに、名乗っちゃった。――思えば、これが僕とパパとの出会いだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る