彼女はいつも笑っている
僕は図書館に向かっていた足を止めた。
正確には、止められた。
見覚えのあるような、ないような、雄猿の足で。
「よぉ。櫻井。」
止められた理由はわからなかったが、こういうときに大事なのは相手にしない事だ。
少しでも反応すれば、こういう奴らは調子に乗る。
「…お前のそのスカした態度、マジ腹立つ。」
「……は?」
突然それだけ言われたが、だからなんだと言うのだ?
言葉が端的すぎて肝心なものがない。やはり頭が悪いのか?
何も言わずお互い睨み合っていると、背後から軽い上靴の音が近寄ってきた。
「ちょっと!変に他の人に絡まないでって言ったじゃん!!」
音の方を振り返ると、ぱたぱたとひとりの女子が、頬を膨らませながら駆け寄ってきた。
「うるせえな。お前には関係ないだろ、サクラ」
「でも櫻井くんも困ってるでしょ!おんなじクラスなんだから、仲良くしようよ!」
サクラと呼ばれた女子はそのまま、ねっ?と僕の方を見た。
なぜ僕まで宥められているのかは理解できないが、この雄猿と諍いをするほど暇だと思われていたのなら誠に遺憾だ。
雄猿は渋々といった様子で足を下ろすと、怠そうに首を鳴らしながら僕が出てきた教室へと入っていった。
そして櫻井くんごめんね!と謝ったあと、この子もパタパタと僕らの教室へと消えていった。
僕は終始理解が出来なかったが、考えるだけ時間の無駄だと思い、さっさと目的地へと歩みを進めた。
桜散り、君は舞う 桃瀬二乃 @MM_xx__
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