エッセイ集。肆

自分の考えや価値観的なものが大変多く含まれておりますので暖かい目で見ていただければと思います。


7…写し絵


今日はこの場所を旅立つ日だ。様々なことがあった。いいことも悪いこともあった。成長したと感じることも出来た。後悔もあった。

どんなことでさえも今となっては語ることしか出来ない。

卒業式という当たり前なものが出来るということがどれだけありがたい物なのか、どれだけの人のおかげで成り立っているのか少しだけ分かる歳になってきた。


卒業式を終え、皆と写真を撮る雰囲気になっていった。さっきまであんなに泣いていたやつでさえ満面の笑みで誰かと写真を撮っている。どうもこの時間になると「あぁ、本当に終わりなんだな」とようやく、実感する気がした。

私も仲を紡いで来た人達と写真を撮り始める。ほんの一瞬まで違う行事で一緒に撮っていたようなヤツら…時の流れは感じた時にはもう触れられないほど遠くにあるように感じている。

一通り撮り終えて私は廊下の柱付近で友達とだべっていた。息を吐くように速いね速いねと呟く他に話すようなことがない訳では無い。ただこの時間に浸りたいだけなのだ。


少しだけもの寂しさに浸っていた時携帯が鳴った。開いてみるとある女子から「いいよ」と一言だけのメッセージが来ていた。昨日迷いながらも送ったメッセージの返事が来たのだ。

私は少しでも速くその人の元へ行きたいと駆けた。

他の人も写真を撮っているの中できるだけ邪魔にならないように、ぶつからないように注意をはらって駆けた…


先程居た廊下の真反対に着きそうな頃ようやくその子が見えてきた。

別にその子とは特別な関係にある訳では無いし、学年一の美少女かとも言われたら少しだけ違うだろう。だがどうしてもその子と写真を撮りたかったのだ。拒否をされたらどうしようかとも思ったがどうせ最後だ。後悔するくらいだったらお願いした方がいい。そう思い私は昨夜その子に連絡をした。

ようやくその子の元へ着いた。

派手な可愛さではない。謙虚であどけなさの残る顔立ちでパッチリとした二重を持ち黒縁のオシャレなメガネをかけている。

身長も平均よりは小さくとても私と同じ年齢には見えなかった。

「本当に写真いいの?」と社交辞令的な確認をしてみる。

するとその子は目を細めて少しだけわかっているような意地悪を言ってきた。

「どうしよっかな。」

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書きつらね 祐乃 こはく @Kohaku131108

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