谷津さん、カケヨメを斬る。。。
次の日。
今日こそは、ちゃんと仕事しなくちゃ。月末なんだから。。。
谷津さんは一心不乱に伝票処理に邁進……しているように見えるが、その実、内心では昨日投稿した習作のことが気になっていた。
「ですよね〜。いくらなんでも、あれはトチ狂ったとしか思えませんもん」
「うぁぁぁ〜〜っっっ! ビックリしたっ!!!」
谷津さんは、古い事務用のイスからお約束どおり5センチくらい飛び上がって驚いた。
声の主は、もちろん、カケヨメだった。
カ「毎度、嫌味なくらい驚きますね〜、いい加減慣れてくださいよ。これで何回めの登場だと思ってます?」
谷「知らないわよっ。そんなの数えてないんだから。今日だけはホントにやめて。今夜、この仕事を終わらせないと、明日、休日出勤になっちゃうんだから」
カ「だからぁ〜、勤務時間中にあんな小説書かなきゃいいんですよ。せめて、月の後半は避けるとか」
谷「アイデアが浮かぶのに、月の前半も後半もないわ。浮かんだ時に書かなくて、いつ書くのよ」
カ「それにしても、あれはいけません! いくら性描写が好きだからって。。。」
谷「別に、好きじゃないわよっ」
カ「あれ〜? この前の10質で『好きに決まってる』とか豪語してませんでした?」
谷「あれは、アレよ。単なる勢いよ。昨日はちょっと……とにかく、アイデアが浮かんじゃったんだから、しょうがないでしょ?」
カ「どうやったら、あんな情景がアイデアとして浮かびますかねぇ。運営さんから削除要請来たらどうすんですか? てか、私は谷津さん自身のことがマジで心配になりましたよ。だから、こうやって様子を見に……」
谷「大きなお世話よっ。アンタに心配してもらう必要なんて、どこにもないわよ。私はピンピンしてるわ。だから、早く消えてちょうだい、マジで」
カ「いやいや、あれはピンピンし過ぎです! 年齢不詳独身女子の欲求不満もここまで来たか!? って、私は目を覆いましたよ?」
谷「ふふふ。アンタにはやっぱり難しかったようね。あれはね、性描写じゃな……」
カ「難しい!? 失敬な! 私だって子供じゃないんですから、それくらいわかりますよ。男に連れて行かれて、寝かされて、あんなことやこんなこと……するなんて、性描写以外になんだって言うんです?」
谷「あぁ、寝かされるのは、ちょっと最新式なのかしらね。私も初めてだったから……ちょっと恥ずかしかったわ。まあ、そのおかげで、このアイデアが浮かんだんだけどね」
カ「ちょっと、あの、なに言ってんだかわかりませんがね、んもぅ、ハレンチ極まりない!!」
谷「何を赤くなってんのよ、子供みたいに。それにハレンチって、いつの時代よ、ったく。。。」
カ「ごまかさないでくださいよ〜。熱いものが駆け巡るとか、快感とか……あの、その、濡れた穴を拭うとか、書いてたじゃないですかっっ!」
谷「うわっ、ヤ〜らしい、アンタ、そんなこと想像してたの? この、エロ猫めが」
カ「な、何を言いますかっ! 私、確かに読みましたよ。エロはどっちですか!!」
谷「ばかねぇ。あれは、美容室のシャンプーの……」
カ「シ、シャンプーっっ!?」
谷「そうよ? って、なに、そんなに毛を逆立ててるのよ」
カ「私、シャンプーはちょっと。。。」
谷「呵呵呵呵……確かに、猫はシャンプー大嫌いだったわね。ご愁傷様。あんなに気持ちいいのにねぇ〜〜」
カ「気持ちよかないですよ、あんなもの」
谷「ふぅ〜ん、まっ、だから、昨日の読んでもわからなかったんでしょうよ。しかも、たぶん童貞よね。。。」
カ「んじゃあ、訊きますけど、熱いものって何ですか! 熱き潮流の源って!」
谷「シャワーよ? カラーリング剤を塗られて、冷えた頭皮に熱いシャワーが行き渡ると、そりゃあ、気持ちぃぃ〜のよ、もうゾクゾクするくらいに!」
カ「んじゃあ、そ、その……濡れた穴ってのは……」
谷「耳に決まってんじゃないの! いつもそうなのよ、もうちょっと奥まで拭いてほしいのに……そこだけなのよ、物足りないのは。でも、私からはなかなか言えなくて。。。」
カ「谷津さん、わざと誤解させるように書いてたってことですか?」
谷「だ・か・らぁ、アイデアが浮かんだんだって言ったでしょ? みんな、わかってくれてたと思うけど?」
カ「ふ、ふん、私だって、そうかなぁ〜とは思ったんですよ。ただ、運営さんがイチャモンつけて来ないとも限らないし、それで心配になって」
谷「今さら言い訳しても遅いわよ。今後、アンタのことは初なエロ猫って思っとくわ。てか、アンタさ、精霊とかなんとか言って、亡霊がシャンプーすることなんかないはずでしょう?」
カ「亡霊とは失敬な! 私は『猫のエッセンス』でできてるんですっっ! だから、ちゅーるとかも好きなんです!」
谷「誰も、ちゅーるの話なんてしてないでしょ? ま、いいわ。誤解が解けたところで、はい、消えてちょーだい! こんなことやってたら、仕事がいつまでも終わんないでしょーが」
カ「また、来ますからねっ! 次の自主企画で……」
谷「もう、令和2年の猫の日も終わったし、今後しばらく、アンタが都合よく勘違いする企画なんて立ち上がらないんじゃない? こっちはせいせいするけど……って、そうだ! この前、私がない時間をやりくりして自主企画用の短編を書いたってのに、アンタ、なんか夜中のヘンな時間にまた私たちの会話を……って、あらっ、消えてるわ。ったく、相変わらず、逃げ足だけは速いんだから、あのエロ猫。。。」
というわけで、しばらくは谷津さんも落ち着いて残業できる日々が戻ってきそうな。。。予感だけはするのだが。。。
妄想女子:経理の谷津さん(年齢不詳) たまきみさえ @mita27
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