8章 青き守護獣の出現
第1節 灼熱の記憶——1日目と2日目
ただ立っているだけの時間は長すぎて、苦しかった。
熱砂をまとう足はひどい火傷になっているに違いない。熱風が運んできた砂は目に入ってきて、痛かった。
汗が流れるごとに蒸発していき、カラカラに乾いた喉では呼吸さえままならない。
じりじりと照りつける灼熱の太陽は少しずつラディアスの体力を吸い取っていく。
やがて立っていられなくなり、砂の中に崩れ落ちた。
炭火のような暑さの中に放り込まれ、死を意識する。
けれど、意識はなかなか途切れなかった。
急激に冷え込む砂漠の夜。
ぼんやりと見上げた空は、墨を流したような黒だった。
目がかすんでよく見えないけれど、きっと夜空には星が瞬いていることだろう。
砂で傷ついた全身を、冷たい夜気が撫でる。
心地いいと感じるのは、痛覚がおかしくなったせいなのかもしれない。
二日目、気づいたら視界が狭くなっていた。
風に運ばれる熱砂が、少しずつラディアスを埋没させようとしているらしい。
空気を吸い込むと熱すぎて、胸が痛む。
布で口を覆えば少しはマシなのかもしれないけれど、腕が動かないのだからどうしようもない。
目が熱くて痛くて開けていられず、気力を振り絞って瞼を閉じる。たぶん、もう二度と開けないだろう。
しだいに痛みがなくなってきている。
いや、むしろ全身が痛すぎてどこが痛いのかすら解らなくなっているのだ。
視界を遮断したせいで、時間経過の感覚もなくなってしまった。
指先ひとつさえ動かせずただ闇が意識を溶かそうとするのに抵抗して、置いてきた大切な人たちを思い出してみる。
彼らの顔すら思い出せなくなったら、きっと最期が近い。
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