毒なやつら

夏目ゆみ

毒なやつら

私の仕事は、世界を飛び回り、昆虫を集めている仕事をしている。

北は北極圏から、南は南極圏まで、様々な国を訪れている。

ただ、仕事柄、熱帯地方に行く事が多いのです。

熱帯地方には、奇妙な生き物が沢山居て、実に面白いのである。


このように、世界を飛び回るとは、華やかな仕事をイメージをするのだろう。

しかし、私たちの仕事は、至って地味で目立たないのである。

きっと、周囲の人たちは、ただの旅人だと思っているに違いありません。


そんな中、今回は、南米のホテルで滞在をしているのだ。

もう滞在して、1ヶ月になる。

そろそろ、南米の暮らしも、飽きて来た頃なのだ。


ホテルは、5つ星のビジネスホテルを取るようにしている。

それは、治安を考えて【仕事の没頭出来るように】との配慮である。

ただ、仕事を放置をし、遊ぶ訳にはいかないのだ。

飽きたと言っても、遊びに来ている訳で無いので、簡単に帰国する事は出来ないのである。

なんせ、ご婦人のご機嫌を損ねてはいけない。


そして、私が寝ている間に、相棒が他の部屋では蜘蛛や蟻を集めているのである。

世界のあちらこちらから、集められた蟻や蜘蛛であるようです。

部屋いっぱいに集められた、蛾や蜘蛛の数を一匹ずつ数を数えている。

何百匹という、昆虫を一匹ずつ数えるのも、とても根気が居る作業である。


そして、その一匹は猛毒の蜘蛛のようです。

今回請け負った仕事は、毒蜘蛛を集めるという事らしい。

形は、普通の蜘蛛だが、毒を持っているので、注意が必要となる。


隣の部屋から、相棒達のしゃべり声が聞こえてくる。

内容は「この蜘蛛どうしようか」と声がヒソヒソなので、私が眠りを邪魔をされる事は無いのだ。


今回、請け負った、毒蜘蛛の色や形などんなものかを問いただした。

「色はショッキングピンクと黒という、なんども派手な色の蜘蛛です。」と相棒は的確に答えた。


このなんとも派手な色の毒蜘蛛は、チクリと刺せば猛毒に変わる。

「何とも恐ろしく、世界でも珍しい毒蜘蛛です。」と相棒が付け加える。


相棒はいちいち蜘蛛を私に、見せに来てくれます。

ただ、猛毒なだけに相棒達が「どうしよう?!」という声があがっていました。


まさかめずらしい昆虫集めは「政府管轄のご婦人の趣味。」だとは言えないだろう。

しかも、こんな猛毒では、飼う前に殺されてしまう。

仕方が無いので、ご婦人にはご説明をして、他の昆虫で我慢をしてもらう事にしよう。仕方がないだろう・・・


こういう事態に遭遇した時には、とても損をした気分になるのだ。


そこに相棒が現れ、手には接着剤を持って現れました。


相棒は、その猛毒の蜘蛛にも臆する事なく、瞬間接着剤を垂らした。

そう、ショッキングピンクの蜘蛛を固めてしまったのだ。


接着剤で、固まった蜘蛛は、ピクリともも動きません・・・

完全に固まったオブジェのようになっているのだ。

これで、刺される心配も無く、簡単に持ち帰る事が出来るだろう。

そしてなんと言っても、ご婦人の機嫌も損ねないで済むということだ。


このように、相棒はいつも良い仕事をしてくれるのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

毒なやつら 夏目ゆみ @yuminatsume

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ