思いがけない告白 (夏美パート)
「もうすぐ、ホットケーキ焼けるから、椅子に座って待ってろ」
この部屋はリビングとダイニングを兼ねてるみたい。そこから少し見えたのは。
キッチンでフライパンにホットケーキミックスから作った種を焼いている冬彦君の姿だワイシャツの上からエプロン、家庭的な冬彦君もいいかも。
部屋を見渡すとやっぱりお金持ちなのかなと思う物が沢山ある。
大きなテレビに綺麗なソファとテーブル、大きな水槽がある何か飼ってるのかな?
「出来たぞ、よかったら食べていけ」
「いただきまーす」
「ええ、いただくわ……」
ホットケーキのお皿を二つ持ってきて私と秋穂ちゃんの前に出す。
焼きたてで美味しそう、既に冬彦君がかけたのであろうシロップがかけられている、冬彦君の手料理嬉しい、勿論食べる、いらない何て言えないよ…………
「美味しいわね」
「ただのホットケーキミックスだしな、美味しいのはメーカーの努力の結果だ」
「おにーちゃんは凄いんだよ、何でも作れるんだ」
「それは凄いわね」
「ごちそうさまでした!」
「はい、お粗末さん、通信簿とか渡すものは?」
「えっと、はいこれー」
「応……いいんじゃないか? 後で母さんにも言っとくな」
「うん、あきちゃん頑張ったよ!」
「そうかそうか、今日はどっか出かけるのか?」
「すずちゃんと公園で遊ぶ」
「そうか、ちょっと待ってろ」
冬彦君も別のホットケーキを持ってきて食べ終わって片づけをしてから秋穂ちゃんの通信簿を見たりこの後の予定を聞いたりする、どっかに遊びに行くみたいでそれを聞くと冬彦君はキッチンに戻って何やら準備をする。
「はい、これ水筒な、玄関の麦わら帽子を被って行くんだぞ、友達が喉が渇いたら水筒の中身を分けて上げるんだ」
「わかったー! いってきます、きんこんなったら帰ってくるね!」
「ああ、行ってらっしゃい」
準備してたのは外に持っていく水筒だったようだ、それを肩からかけさせてあげるとそのまま見送った。本当にいつも面倒を見て上げてるんだな。
「ふぅ、待たせたな、小寺」
「大丈夫よ」
「とりあえず、これこの前の怪我の手当ての礼、似たようなハンカチを探して買って来た、よかったら貰ってくれ」
冬彦君が一つのラッピングをされた箱を渡してくれる中身はハンカチみたい。
「あ、ありがとう」
「それと、この前のあの告白の返事なんだけど、あれはさ……」
冬彦君はハンカチを渡すと同時にあの時の告白の返事の事を話してくれる。
なんでも先輩に言われて振ったとか、本心からじゃないんだ、ほっとした。
「つーわけで、今からが俺の本当の返事、あの時は好きとか嫌いとかよくわからなかった、でも今はなんとなくわかる、なにせ、ケガの手当てしてもらってから小寺の事が頭から離れないんだよ」
え、私の事が頭から離れない、え、なにその嬉しい告白。
「寝ても覚めても思い出すし、笑ったら可愛いだろうな笑顔が見てみてぇなとか」
え、何それ、冬彦君が見たいならいつでも見せるよ。
「色々抜きにしたらさ、俺だって彼女がいたら楽しいだろうなって思ってる、そんでそれが、俺の事を好きだって言ってくれた小寺だったらいいなとも」
え、自惚れていいの? 冬彦君が私の事を彼女にしたいって、何、え、夢?
「でも最初の返事の時も言ったしさっきも見て貰った通り、俺は妹の事や家の事とかで、世の中のカップルよろしく二人きりでおてて繋いで仲良くデートとか出来ないかもしれない」
別にそんなのいい、冬彦君が彼氏になってくれるだけでそれだけで嬉しいもん
「それに関係が続いてもし結婚ってなったら、俺は母子家庭だから色々苦労をかけるかもしれない」
そこまで考えてるの、大丈夫だよ、冬彦君が望むなら必ず添い遂げてみせるよ。
「それ全部踏まえてさ、俺頑張るからさ、小寺の事好きでいていいか? そんでよかったら、付き合ってくれないかな?」
冬彦君が優しい笑顔をしながらも目はとても真剣そうに私の方をみつめていた、どうしよう、泣いちゃう、泣いてる姿を見られたくなくて俯いてしまう。
ずっと、あのときから好きだった冬彦君が付き合ってほしいって言ってくれてる。声を出して、こちらこそお願いしますと言いたいのに声が出ない。
冬彦君が待ってるのに、どうしよう。
「声が出ないなら、首を縦に振るでも、そうだな、俺の手を触ってくれるでもいい、答えをくれないか?」
冬彦君が手を差し出してくる、声が出ない私に向かって、その手にゆっくり壊れ物を触るように少しだけ振れる、固くてゴツゴツしてる一人でいつも主夫として頑張ってる手だ、恐る恐る顔を上げて冬彦君の方を見てみる、彼と目が合うと彼は少し照れて顔を赤くしながら微笑んでくれた。
この日、私の7年にも及ぶ片思いがようやく成就した。
世話焼き兄貴とマドンナと愉快な親友による賑やか青春譚 HIRO @iaiaCthulhu1890
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