終業式 (夏美パート)
「やっと、夏休みだね、小寺さん」
「高校生初の夏休み、計画建てようよ」
「ええ、いいわよ」
とうとう終業式の日が来た、冬彦君のほうをちらっと見たけど、顔の腫れも引いてるし足の方も酷く無かったようで自転車で学校まで来ていた。あ、目が合った。
と思ったらすぐに顔をそむけられちゃった、ちょっと悲しい。
「また、黒田君の事見てたの~」
「本当、黒田の事好きだよね、振られたのに」
「一応誘ってみる? 多分妹さんがーで無理だろうけど」
友達が私が冬彦君を見てる事を指摘してくる、だ、だって好きなんだもん。
顔には出さないように気を付けながら話を合わせる。
最後の友達が一応、冬彦君に夏休みに遊びに行く計画に誘ってみたけど、やっぱり妹さんの事もあって、遠出は出来ないと断ってきた。
そうじゃなくてもどこかに行くなら妹さんも一緒になるもんね。
「きりーつ―――れーい」
『ありがとうございましたー』
「明日から夏休みだが、高校生らしく健全で文化的な夏休みを過ごすように、以上」
終業式は特に話す内容が無いくらいつつがなく終わった。
最後の先生の挨拶が終わると各々が友達と集まって、朝に行ってた夏休みの計画の調整を話し合っていた。私も友達に予定を聞かれるので近日中の予定を話す、結局冬彦君と会えるのは二学期までお預けかな、寂しいな。でもでも友達と過ごす夏休みだって悪くないよね。
次に集まる日取りを決め終わったので、私は校門で上履きから革靴に履き替え帰ろうとした時、声がかけられた。
「小寺、あー、えっと、今日、放課後、予定空いてるか?」
「ふぇ!? あ、く、黒田君、えっと、その、あ、あう」
「空いてないならいいんだが」
「だ、大丈夫よ! 空いてる、もうとっても暇よ!」
「そ、それじゃさ、この前の怪我の手当ての礼がしたいから、時間欲しいんだけど」
「う、うん! そ、それじゃいきましょうか」
キャァァァ、冬彦君がいきなり話しかけてきた、どうしよ、変な声出てないよね。
冬彦君は自転車を取りに行くから少し待っててくれと言われたので靴を履き替えて校門の前で待つ。
「待たせたな、ほいこれ」
「あ、ありがとう」
自転車を取りに行って戻って来た冬彦君が自販機で買ってきたお水を渡してくれるその後は行こうといって校門を出ていく、歩いていく冬彦君を私も追いかける。
といっても、冬彦君はそこまで歩く速さは早くなくすぐに隣に追いつく。
「……今日も暑いな」
「そうね」
「友達と夏休みの計画を建ててたみたいだが、どっか行くのか?」
「そうね、夏祭り、花火、映画にプール、色々よ、黒田君は?」
「俺は妹次第かな……母さん、今年は忙しいみたいだから」
「そう」
「あ、おにーちゃんだ!」
「お、秋穂、そっちも終業式終わったのか」
「うん終わったよ!」
二人で歩いてると女の子が冬彦君に抱き着いてくる、茶色の髪に瞳。
冬彦君をお兄ちゃんと呼んでるから妹さんだろう、可愛い子だ。
冬彦君は妹さんの荷物を自転車の籠に乗せてあげると一緒に歩く。
「ねぇ、黒田君何処に向かってるのかしら」
「俺の家」
へ? オレノイエ? そういう喫茶店かしら?
「というか、着いたぞ」
「え、そ、そう」
一つの家の前に冬彦君が止まる、で、でっかい、お庭も広いしもしかして冬彦君ってお金持ち? その冬彦君はお庭に自転車を止めると妹さんを先に家に入れてから、私も招き入れる。い、いいのかな、いいんだよね、お招きされてるしお、お邪魔しまーす。
「秋穂、手を洗って来い、小寺も、その間に昼飯作っておくから、食べてけ」
「はーい、いこ、おねーさん!」
「え、わ、わかったわ」
冬彦君は妹さんと私に手を洗うように洗面所の方を指差した、自分はお昼ご飯を作る為に別のドアから他の部屋多分キッチンのある部屋に向かったんだ。
それにしてもオヒルゴハン? ツクル? タベテケ?
「ねえ、おねーさんはおにーちゃんの友達?」
「え、ええ、そうよ、小寺夏美っていうの」
「じゃあ、なっちゃんだ、私は黒田秋穂、あきちゃんって言うの」
「そう、よろしくね、秋穂ちゃん」
妹さんの事は聞いてたけどとても可愛い、これは誰でもシスコンになっちゃうよ。
二人で仲良く洗面所で手を洗い、ドアからリビングへと入るのだった。そこでは。
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