エピローグ

 久しぶりに王城の中を歩くのは非常に緊張をする。好機の目で見られていることにも気づいていたが、後ろへ続く二人のお陰で、どうにか動揺を隠せていた。

 通された部屋の前で止まり、二人へ声を掛ける。


「終わったら、エルペルトが治療を受けている場所へ向かうよ。スカーレットはこの場で待機していてくれ。くれぐれも喧嘩はしないようにね?」


 エルペルトが頭を下げ、スカーレットが約束を守れなさそうな顔を見せたが、諦めることにして室内へと入った。

 室内には、すでに俺以外の全員が揃っている。父であるカルトフェルン国王が顎で示した席へと座った。


「それで、セスよ。これは一体どういうことだ?」


 陛下の見せている紙は、俺が兄弟姉妹へ送ったものだ。なんの許可も無く、王位継承権を放棄するような約束は認められない、ということだろう。

 ……前の俺なら引き篭もっていたか逃げ出していた。少し成長した後は、声を出せずに怯えていた。

 そんなことを思い出し、笑みを浮かべながら立ち上がる。


「実は、王位を争うよりも大事なことがありまして……。そのために、援助をしてもらいたいのです」

「理由が正当なものであれば、国が援助を行おう」

「いえいえ、それではダメなのです。王位を狙っているのでは? などと勘違いをされ、足を引っ張られて勝てるような相手では無いのです」


 陛下以外には意味が分からないだろう。声にこそ出していないが、相手が誰か、どの国なのかと、顔に出ていた。

 今までの六番目の王族は、隠して生きて来たのかもしれない。だが、俺は違う。なんとしても勝利するために、打てる手は全て打たせてもらう。


「できれば穏便に勝利したいですが、相手も一柱というわけでもないようですし、最悪を想定する必要があります」


 ペラペラと話していることに焦れたのだろう。

 第二王女シュティーアは立ち上がり、強く言った。


「一体なにをしようと言うの! 具体的に述べなさい!」


 その質問に対し、薄く笑う。

 オリアス砦にいる者たちとも話し合い、最悪の場合はそうなるだろうと、覚悟は決めた。

 俺はゆっくりと、導き出した答えを述べた。


「――神殺し・・・


 これは俺が、国からは無能だと罵られたまま抗い続け、大切な仲間と、そして兄弟姉妹と力を合わせたり敵対し……神へと勝利する。

 そんな、歴史には刻まれなかった話である。


 おわり

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第六王子は働きたくない 黒井へいほ @heiho

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