第18話 御礼話 先入観に負けた利根田 理子
「お花ちゃーん! 遊びに来たよ~!」
「りこちゃんいらっしゃ~い。ゆっくりしてってね~」
ぽやや~んと出口で出迎えてくれる。今日は桜色柄のワンピースで、ふんわり広がった生地とお花ちゃんのふんわりした頬の丸みや笑顔と相まってもう花畑の妖精の様である。
かわいい!!
そしてお家も一軒家で何か小人さんが出てきそうな感じの白地レンガでとんがり帽子の家なのである。
かわいい!! 似合う!!
という訳で、本日はお花ちゃんの家へとお休みの日に遊びに来たって寸法である。
しかも!!
「今日は聖也くんいないね」
「うん~。今日はいないよ~。家族旅行だって~」
よっしとお花ちゃんに見えぬ所でぐっと拳を握ったのは内緒のことである。
ふわっはっは! レア日!! お花ちゃんを独り占め出来る完全なるレア日!! しかもお家で遊べる!! ふわっはっは! 我がボーナスタイム来たー!!
完全に舞上がってスキップしながらお家の中へと案内してもらう。
あれはね~とお家の中に飾られた花瓶を指して、ネモフィラってお花なの~とふんわり解説してくれる。
ああ、かわゆきかな癒し哉
他にもゆっくりなお花ちゃんと一緒にのんびりお話したり、お家探検したり、お花ちゃんのお母さまにジュース頂いたりと完全に女子会をきゃっきゃうふふと楽しんだ。
うっひょう! これ! これがしたかった!!
ちなみにお花ちゃんは一人っ子らしい。あと、聖也くんにはお兄さんが居るそうな。会ってみたいようなみたくないようなである。聖也くん二号…、むしろ聖也くん一号?というか強化版だったら地球がヤバそうだ。
オレンジジュースをずこーっと吸いながらお花ちゃんと会話していたら、お花ちゃんが「あ!」と閃いた様子でゆぅっくり手を打った。
すごいぞ、まるでスローモーションを見ているようだ。音が聞こえないのは遅れてやってき過ぎてに違いない。
「りこちゃんあのね~。この前ゲーム機買ってもらったんだよ~」
「わぁ! いいなぁ! お花ちゃん一緒にやろ?」
「うん~!」
にっこにしながら、いそいそ準備するお花ちゃんを手伝う。
出てきてびっくり、プレイステ5ちゃんであった。
うおおお! 最新!! すごい!! やりたい!!
我が家には残念ながら家庭用ゲーム機はないのでもうテンションが天井を突き破りそうである。
カセットを選ぼうと見ると、お花ちゃんの好みと、もしかしたら聖也くんとかお花ちゃんのご両親チョイスだろうか、何故か勉強系も混じりつつのお年寄りでも楽しく身体を動かせるものから、箱庭系、冒険系などに偏っている。でもゆっくりお花ちゃんに配慮してか、スマッシュシスターズの様なやつは無く、ペケモンみたいなアクションのないものばかりだ。
「お花ちゃんペケモンしよ~」
「うん~!」
おっしとお花ちゃんとペケモンを準備する。
ほわわわ、乗れる!! ペケモンに乗れる!! 後ろに付いてくる!! かわいい!! 撫でれるかわいい!!
お花ちゃんが偶に草むらのあたりで迷子になってぐるぐるし過ぎてゲームオーバーになり掛けるというアクシデントはありつつも、何とか隣町に到着した。
ふいー、一時間掛かったぜ……
ちなみにお花ちゃん操作五十分、私十分の配分である。無駄にレベルが上がってる気もしなくもなくないが、まぁ後ろに付いてくるペケモンが可愛いし、お花ちゃんがあれ~?と言いながら最初の入り口に戻って首を捻ってるのも可愛かったから何も問題はない。何も見なかった。いいね?
「ナゾちゃん回復して~、そろそろりこちゃん時間~?」
「あ、そっか、もうそんな時間かぁ」
てんてんてろてん、という軽快ないつものペケセンの音楽が流れる。お花ちゃん愛用の連続戦闘を乗り越えた歴戦戦士ナゾナハナちゃんを回復させていると、画面を見ていたお花ちゃんがしょんぼりとこちらを向いた。
うう、とつられて私も哀しくなる。
楽しかったのに早すぎるっっ
「お花ちゃんまた遊びに来るねっ」
「うん~! りこちゃん絶対だよ~。ゆびきりげんまん」
また遊びに来ると頷けば、お花ちゃんはまたお花が咲いたみたいにぱぁっと笑って、少し短くてもちもちしてる小指をそっと差し出した。
私も元気よく小指を絡めて上下に振る。
この世界でも変わらない指切りの歌を二人して声を揃えて歌い終わって、さぁいざ帰ろうかと二人して立ち上がった時だった。
「あっ」
「お花ちゃん!?」
それはスローモーションなのに一瞬の出来事であった。
立ち上がったお花ちゃんは、足が痺れていたのか、ふらりとふらついてしまう。
その真下には飲みかけの私のオレンジジュース。
咄嗟にお花ちゃんをキャッチして安堵の息を吐くも、今度は私がバランスを崩す。
くぅ、我が運動神経とバランス能力っっ
しかし耐えた!!! ここで何と我がりこ腹筋は粘りを見せてくれた!!!
そうしてイナバエワーの要領で何とか耐え来った私の足元で、お花ちゃんの足に当たって吹っ飛ぶオレンジジュースのコップin飲みかけVer
びっちゃとオレンジジュースが掛かるプレイステ5ちゃん
「プレイステ5ちゃーーーんんん!?」
俺、やりきったぜ…とばかりにびっちゃり血塗れ、もといオレンジのいい香りとオレンジ色塗れになってるプレイステ5ちゃんを慌てて救出する。
脳内には高額、弁償の文字も乱舞している。
「りこちゃんごめんねぇ。大丈夫だよ~。前もコンポタと麦茶零したけど大丈夫だったもん~。最近のは防全水仕様に……、りこちゃ~ん?」
ゲーム機は水に弱いという先入観に負け、この世界の新事実に愕然と振り向いた時には既に我が右手に『プレイステ5から救出したペケモンのカセット』があった。
ぶつっと真っ暗になってしまっているテレビ画面と、今度は逆にどや顔して見えるプレイステ5ちゃん、そしてお花ちゃんと『セーブ前に抜いてしまったペケモンカセット』を見比べる。
ああーーー!!!
「りこちゃん私も転んでごめんねぇ。また一緒に進めよっか~」
「お花ちゃんごめんねぇぇぇ!!」
ふんわり笑うお花ちゃんに申し訳なさがマックスになる。
後日、また近いうちにお花ちゃん宅来訪を決意するのであった。
次は聖也くんも一緒にやればもっと早いに違いない。うん。
そんな、お花ちゃんとののんびりゲーム日和であった。
あとがき
日頃の感謝を込めて☆(別サイトで初めて感想をくれた方が冒険乃書さんだったので作った小話です~(笑)
一応次話投稿予定は
中学生編 【中学一年生 適性検査】となっております~☆
書きたかったところなんで楽しみなんすよね~
(∩´∀`)∩
んではでは~☆
趣味だったオメガバースの世界に転生したようだが、何か違うので布教しようとしたら変態扱いされる件■ストック24万字 トネリコ @toneriko33
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