第12話 答え

血の匂いがする。もう、目の前の彼は動かない。触ると、どんどん冷たくなっていく。私はずっとこうしたかった。貴方を傷つければ満たされると思ったのに...。

苦しんで絶望する姿をもっと見たかったのに...。

目隠しをとって彼を見ると顔は腫れていて所々出血があるものの、まるで寝ているかのように優しい表情だった。


 彼は最後に口を動かしていた。恨み言を言われるのかと思っていた。いや、そうであって欲しかった。私を恨んで憎んで息絶えてくれることを望んでいたのだから。でも違った。


 "愛してるよ"



確かにそう最後に言っていた。

智也は私のことを最後の1秒まで想っていてくれたのだ。


なのに私はそんな彼にひどいことをした。 

ゲームのようにリセットボタンはない。

もう智也は生き返れない。

血の匂いは好きだ。

誰かを傷つけることに罪悪感なんて

感じたこと一度だってなかった。

でも、今は違う。

私はきっと本当は愛を知り始めていた。

でも、怖かったのだろう。

その愛を認めてしまのが。

私にとって普通ではなかったから。

だから確かめようとしたのだ。

智也を殺すことで。

それが本当に愛だったのかを。

苦しい。

目からは大量に涙が溢れ出す。

こんなに泣いたのはいつぶりだろう。


普通ってなんだろう。

幸せって愛って

正しいって何。


私は自分を押し殺すことでしか

生きれなかった。

そうしないとここでは生きていけなかったから。



私は台所からまた包丁を持ってきて

横たわる智也の横で自分のお腹を刺した。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

床が赤く染まる。

意識が次第になくなる。

もう私は誰も傷つけたくない、

自分のこともこれ以上嫌いになりたくない。


ごめんね...



神様...もしも私にもう一度だけ人生をやり直すチャンスをくれるなら今度は最初から愛を知れる環境で今度こそ、智也と幸せになれる未来を下さい



なんて...無理か。私は殺人者なのだから。



地獄にいく覚悟をきめて私はそのまま深い眠りについた。


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黒い夢 美咲 @misaki070719951024

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