第11話 それでも彼女を愛せるか

 

 あまりの痛さに一度は気を失ったが、また意識が戻ってきた。


 思い返せば、彼女はいつも無理をしていた気がする。俺の前ではいつも笑っていたし、弱音も一度も吐いたことがない。泣いた顔も苦しそうな顔も見たことがなかった。悩み事も愚痴も聞いてもらうのはいつも俺ばかりで、俺は彼女の支えにはなれていなかったのかもしれない。


そんなことを考えていると、突然前髪を引っ張ら頭を持ち上げられた。


「やっと起きた??まだまだこれからなんだよ??」


首に冷たいものを当てられて、それが刃物だと気づくのにそんなに時間はかからなかった。


「ねぇ、もっと叫んでよ。絶望してよ。」


首に軽く刃先が向いてそこから血が溢れ出す。

俺はきっと出血多量で死んでしまうのだろう。

どうして、こんな苦しんでいる亜美に気付いてあげれなかったんだろう。


 「ゔっああ....!!!」突然腹部を蹴られてまた痛みに襲われる。首から流れる血も足から流れる血も

もうどれぐらい時間が経ったのかもわからない。

今度は腹部を蹴られて、それでもまだ足りないのか次は顔を何度も何度も殴られる。痛い。亜美に気付けられた身体も心も。


怖い。まだ死にたくない...。

でも、真っ暗な世界では何も出来ない。

こんな暗闇の中に亜美はずっといたんだろうか...。


怖かったよな...。苦しかったよな...。

俺は亜美が本当に大好きだったよ...。

"君の全てを受け入れる"

あの言葉に嘘はなかったよ...。

でも、ごめんな...。

救えなくて...。


俺は最後に精一杯の力を込めて、口を動かし、声は出なかったけれど亜美に今の気持ちを伝え、また目を閉じた。

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