第10話 真っ暗な世界
朝目覚めると、そこは真っ暗だった。身体を動かそうとしても何か紐のようなもので手足を縛られているみたいで身動きが取れない。
俺は一体どうしてこんなことになっているんだ...??起きたてで上手く回らない頭を必死に動かす。昨日は結婚式で、その後は亜美と一緒に新居へと帰ってきたはずだ。あれ?俺がこうなっているということは彼女は無事なんだろうか...
不安になって「亜美!!」と叫んだ。
すると、「智也、おはよう、やっと起きたんだね」と聞きなれた声が聞こえた。声に動揺はない。普通、もしも亜美も俺と同じ状態になっているのならもっと慌てていてもおかしくない。でも、彼女は冷静だ。ということは、彼女自身がこの状況を作り出したということだ。
「亜美...なんで、こんなこと...」
俺はパニックになって亜美にそう聞くと
「私ね、本当はずっと智也と一緒にいる私が嫌いだった。」
「智也といる私はいつも気を遣って優しい女になろうとしてた。本当はそう思っていなくても貴方が望む答えを出し続けてた。
私ね、普通になりたかったの。普通の女として人生を生きてみたかった。
だからまずは、人を愛することから始めてみようと思ったけどダメだったみたい。」
と答えた。
「ダメだった...??」
「智也は愛を注がれて生きてきたんだなぁって。
一緒にいると苦しくなることもあった。でも、もうやめた。無理に愛することも普通になろうと努力することも」
亜美がそう言った瞬間、右足に今まで感じたことのないような強烈な痛みが襲う。
「いっ....」「うあぁっ....!!」とあまりの痛さに悲鳴をあげ、目からは体力に涙が流れ出す。
「智也、今どんな気分...?自分が愛した人間に刺される気分は」
「あなたが好きだった亜美なんて居ないの。優しくていつも笑ってる子なんか。だってそれは私が作った偽物だから。本当の私ね、いつもこうやって誰かを傷つけていたいの。」
「智也、私は今の貴方と同じようにずっと暗い世界の中で生きてきた。貴方にも知って欲しいの。だから...」
俺はあまりの痛さに彼女が話している途中で意識を失った。
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