第4話【誰】前編

寝付きの悪い私が、珍しく早く眠れた日のことです。とろとろと船を漕ぎながら、ジワジワとこめかみから湧く灰色のドロドロを見ていました。その時に見た夢です。






私の学校の近くには、商店街とまでは行きませんが、少しお店の並んだ小道があります。があります。 通学で使うには少し回り道になってしまうのですが、その小道の雰囲気や細々としたお店の並びがとても好きなので、私はいつもこの小道を通るようにしていました。


その日の夢の中でも私は小道を通っていました。すると、いつもはない所に新しく脇道が出来ていたのです。その時は通学中ではなく、空きコマでお散歩に来ていたので迷いなくその脇道に入りました。


脇道に入ると、何やら古風な街並みでした。まるで昭和の町並みのようで、本当に違う世界にきてしまったようでした。その小道には駄菓子屋があり、色とりどりの飴や水飴、ラムネ菓子など沢山のお菓子が並べられていました。


駄菓子が食べたくなった私は早速お店に入ろうとしたのですが、なんとお財布を学校に忘れてきてしまったので、とりあえず今来た道を戻り始めました。


その時、後ろからコツコツと足音が聞こえました。この脇道は道幅が狭かったので、とりあえず道の端に寄りつつ戻っていくと、コツコツという足音はドンドン大きくなっていきました。まるで私を追いかけるように。


私を追いかける者の正体を知りたかったのですが、振り返る勇気はありませんでした。その為、お店のガラス戸や窓の方に目をやりました。






そこには、私の後ろにぴったりと引っ付くようにして歩く、背の高い白目の女がうつっていました。そして、私がガラスの反射で覗いていることを知っているかのように、女もガラス越しに私を見つめ、にんまりと笑っていました。


女の額には、赤い文字で【誰】と書いてありました。関わってはいけない、関わってはいけないとひたすら脇道の出口まで走り続けました。


足音が遠ざかり、脇道を出ました。振り切ったかと後ろを振り向くと、女はわざと私と視線を合わせる為なのか、腰を屈めて至近距離で笑っていました。




私は怖くなって、必死になって走りました。すると、小道の向こうに自転車でパトロール中の警察の姿が見えました。私は本当に怖くて怖くて、助けてください、と叫びました。すると警察は私の方を見やり、アッと。「○○さん。」





後編に続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

来ないで やいり @komesoudou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ