第3話【保育実習】
※今回は守秘義務的な内容が含まれる為、少々フェイクを含ませながらお話していきます。
私は保育科に通う学生です。去年、やっと最後の実習を終えることが出来ました。
保育科の学生の大半にとって、実習はとても不安です。そんな実習前の不安からか、また眠る私に灰色のドロドロが来ました。今回は実習前に見た夢のお話です。
気が付くと、私は実習先の園にいました。キャアキャアと聞こえる子どもの声や、園舎独特の香りなど、園の雰囲気を感じて、この園での実習が二回目ということもあり、実習頑張らんとあかんなあ!なんて、1人意気込んでいました。
職員室に入ると、何やら違和感を感じつつも園長先生や主任の先生に挨拶をしました。ですが、2人とも表情がとても恐ろしく、まるで何かに怒っているようでした。
「あなた、今一体何時やと思ってるの。」
主任の先生が冷たく私に言い放ちました。背筋がぞくりと粟立ち、恐る恐る時計を見やると、針は午後3時をさしていました。
基本的に実習は朝から夕方で、遅刻は厳禁です。余りにも遅刻が酷ければ、実習は中止。保育資格をとるのに必要な実習の単位が貰えなくなってしまうのです。
そんなことは重々承知でしたし、元々時間に対してルーズでいることが嫌いな性格でしたから、こんな大幅な遅刻をすることはまず有り得ないと考えたのです。
ですが時計は3時。初日からこの遅刻はどう考えてもやる気を問われることになります。
嫌な汗をジクジクとかいて、先生方の指導を受けました。
ーーーやる気はあるんか?
ーーーあなたもう社会人になるんやで?
ーーーあなたみたいなだらしのない子が保育者になれると思ってるん?
心臓がバクバク脈打ち、呼吸が上手く出来なくなった時にあることに気付きました。
寝付く前に見たスマホの画面に表示された日付は、実習開始日よりずっと前。つまり実習はまだ始まっていないはずなのです。
ここで私はこれが夢と気付きました。それと同時に、職員室に入った瞬間の違和感の正体にも気付きました。
ここは職員室なのに、子どもが居すぎるのです。
基本的に子ども達が職員室に入ることは良しとされていません。理由は簡単。様々な書類や、カッターなど危険な物があるからです。
ですがこの職員室には、1クラスといってもおかしくないくらい子どもがいました。床、机の上、机のまわり、私の周り……
そしてもうひとつ、違和感。こんなににもたくさん子どもが居るのに、誰一人として私が知っている子どもがいないのです。
先述した通り、この園での実習は2回目です。にもかかわらず、知っている顔の子どもが1人としていないのです。
私は恐る恐る、口を開きました。
「あの、先生。」
「なんです。」
「まだ実習の日とちゃいますよね」
その場にいた子ども、先生達がギョロリと一斉に私の方を見て「チッ」と舌打ちをしました。
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