第18話呪文体系
さて、『ファイナルニャンタジー』もエンディングを迎えたぞ。だいたいのところはわかった。俺の『ドラゴン娘クエスト』ではメインテーマだったお姫様の救出をプロローグ扱いにして、そこからクリスタルと言ったメインテーマを持ってくるなんて、あじなマネしやがる。
それにしても、火、冷気、雷と言った属性を攻撃呪文だけでなく、それをつかさどる四天王まで出すなんて。火、土、風、水の四天王だと。くそ、属性だけで敵幹部のキャラが立つじゃないか。ラスボスに従う四天王だと。そんなもの面白くなるに決まってるじゃないか。
ならば、俺だってそのアイデアを進化させてやる。まず王様から魔王退治を依頼されるんだ。そしてその魔王を退治する。ここまでで『ドラゴン娘クエスト2』以上のボリュームにするぞ。
そして、その魔王を退治したと思ったらじつはそいつは大魔王の部下に過ぎないと判明するんだ。そして大魔王を退治しに闇の世界に向かう勇者パーティー。その闇の世界は……ここでプレイヤーは度肝を抜かれるんだ。
ラスボスの大魔王のキャラクターも大事だぞ。『ファイナルニャンタジー』め。ラスボスを同じ人間にしてきやがった。人間の敵が同じ人間だと? そんなものはリアルで十分だ。俺はゲームのラスボスは人間の宿敵であるモンスター娘のままにするぞ。そんなラスボスのモンスター娘を倒してエロ画像を見るから興奮するんだ。
まずは、ラスボスの前に地上の魔王の色違いコンパチモンスターを用意するんだ。プレイヤーに『ええ、あんなに苦労して倒した魔王の色違いが前座扱い?』なんて驚きを与えるんだ。
そして肝心のラスボス。『滅びこそ我が喜び。死にゆく者こそ美しい。さあ、我が腕の中で生き絶えるが良い!』なんてセリフとともに戦闘開始だ。王女への愛? 王座の奪取? ラスボスにそんなもの必要ないんだ。『ファイナルニャンタジー』のラスボスはそんなものにこだわっていたようだがな。
ラスボスを倒したら、そのラスボスが自分を倒した勇者を讃えるんだ。自分を倒した勇者を素直に賞賛する。だからこそそのシチュエーションにプレイヤーは興奮するんだ。その興奮が最高のオカズになるんだ。
くくく。ラスボスを倒したあと、プレイヤーはこの『ドラゴン娘クエスト3』が序章であることを知るんだ。ここから、『ドラゴン娘クエスト』『ドラゴン娘クエスト2』につながるんだ。『そしてでんせつははじまった!』どうだ、まいったか。
しかし、スクエーアのやつ。ファイア、ファイラ、ファイガだって。安直な高位呪文のネーミングしやがって。こっちは限られたカタカナ文字でメラやらベギラマなんて呪文の名前をひねり出したんだぞ。
スクエーアのやつが呪文体系なんてものを作り出したから、こっちも受けて立たないわけにはいかないじゃないか。メラは火炎呪文で……メラミ、メラゾーマだ。ふふふ。このセンスがスクエーアのやつにはないんだよな。
ベギラマは……ギラ、ベギラマ、ベギラゴン。イオナズンは……イオ、イオラ、イオナズンだ。いいか、スクエーア。高位呪文ってのはただ語尾をラやガにすればいいってものじゃないんだぞ。
氷結系呪文も作らないとな。おっと、僧侶にも攻撃呪文を用意しないとな……風で切り裂く呪文にしよう。
それにしても、バッテリーバックアップなんて便利なシステムができたものだな。セーブアンドロードなんてできなかったから、ふっかつのじゅもんなんてパスワードを設計したのに。
ぱ行とば行が区別できない。『ぬ』と『め』、『わ』と『ね』を書き間違えるなんて悲劇ももう起きないのか。あの、ノートにふっかつのじゅもんをメモすることがなくなるのは寂しいような気もするが……なにせ、パーティーメンバーの職種やステータスをふっかつのじゅもんで管理しようと思ったら、何百文字ってレベルになるからな。
『じゅもんがちがいます』……このメッセージを書いた俺本人ですらこのメッセージを見ると絶望したんだ。メモを二回とる。なんて方法がまたたくまにドラクエプレイヤーに広まったのはふっかつのじゅもんならではだな。
なかには、ポラロイドカメラやビデオ録画でふっかつのじゅもんを記録したリッチなプレイヤーもいたみたいだ。『ドラゴン娘クエスト』のプロデューサーとして名前が売れた俺ですらそんな金にものを言わせた記録方法はできなかったのに。そんな大金持ちまで夢中にさせるのが俺の『ドラゴン娘クエスト』なんだな。
大半のちびっ子プレイヤーは意味不明のふっかつのじゅもんをメモしたノートを親に捨てられたり、頭がおかしくなったと勘違いされたみたいだけど……そんなことも遠い昔の思い出になってしまうのか。
しかし、そのバッテリーバックアップを俺の『ドラゴン娘クエスト』より先に『ファイナルニャンタジー』が採用したのは気にくわない。
異世界モンスター娘、前から見るか? 横から見るか? @rakugohanakosan
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