解説:最高の目覚め

テーマ「最高の目覚め」。

カクヨムの解説を読んだら「基本夢オチ。スカッとする夢オチを見せてくれ!」とのことでした。あっやっべ、目覚めの解釈間違えた。まあいいや。


東晋とうしん時代の英雄が誰かって言えば、祖逖そてきとか陶侃とうかん郗鑒ちかんとか謝玄しゃげんとか(劉裕りゅうゆうもそうはそうだけどアレは別口)も挙げられるんですが、やっぱりこの人、桓温かんおんが真っ先に上がる名前だと思っています。そんな彼のエピソードの中でも、オチャメだったり微妙に小者っぽさを発揮してくれてるふたつの世説新語せせつしんごエピソードを合体させました。



賢媛21

桓宣武平蜀、以李勢妹為妾、甚有寵、常著齋後。主始不知、既聞、與數十婢拔白刃襲之。正值李梳頭髮委藉、地膚色玉曜、不為動容。徐曰:「國破家亡、無心。至此今日若能見殺、乃是本懷。」主慚而退。

桓温が李氏を囲ってると奥方にばれ、奥方が殺しに出向いたら、むしろ奥方は李氏の美貌と堂々たる態度に感服してしまった、というお話。


簡傲8

桓宣武作徐州、時謝奕為晉陵、先粗經虛懷而乃無異常。及桓還荊州、將西之間意氣甚篤。奕弗之疑、唯謝虎子婦王悟其旨、每曰:「桓荊州用意殊異。必與晉陵俱西矣。」俄而引奕為司馬。奕既上、猶推布衣交、在溫坐、岸幘嘯詠無異常日。宣武每曰:「我方外司馬。」遂因酒轉無朝夕禮。桓舍入內、奕輒復隨去、後至奕醉。溫往主許避之。主曰:「君無狂司馬、我何由得相見。」

桓温、謝奕しゃえきのことを高く買っていたので、荊州けいしゅうに異動するにあたってスカウトしたのはいいけど、ものすンげえ酒癖が悪いわ酔うと絡んでくるわで鬱陶しいから奥方のもとに逃げ込んだら「あのキチガイがおらねば、お前さまとお会いすることもございませんでしたわね?」と奥方にぴしゃりと言われたよ、というお話。



どっちのエピソードもものすごい好きなんですが、際立つのはやっぱり奥方なんですよね。東晋の二代目皇帝、明帝司馬紹しばしょうの娘。母親は氏。その兄弟が長いこと宰相として権勢を奮っています。どセレブもいいところです。その上で李氏を殺しに赴こうとする行動力を見るに、果断の人。果断の英雄桓温とはよくお似合いだよなーと思うのですけれど、まぁ怖かったろうなぁ、桓温w


これらのエピソードについては、「小川茂樹」さんが漫画になさっておられます。世説新語を知るより前に先に漫画でこのエピソードを知ったので、影響力がでかいでかい。それとの棲み分けをできるよう頑張りましたが、やっぱり桓温が奥方に頭が上がらない、という部分は拭い去りようがなく。いやあ……同時代に同じ古典でゲラゲラ笑える方にいていただけるって、ほんにありがたい。



参考資料


世説新語

賢媛21

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885790456


簡傲8

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054886494559



PIXIV 小川茂樹

世説新語 賢媛篇(21)漫画

https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=47950068


南康長公主 「君に狂司馬無くんば、我何に由りて相見ゆるを得ん!」

https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=57490670

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