【司馬炎・王済】極上の豚肉を
その結果、戸籍に載る人口がめっちゃ減った。だいたい 5600 万人が 780 万人になったっていう。
ギャグみたいな話だよな、約七分の一だぜ?
つっても、どいつもが死んだわけじゃない。多くは戸籍で管理できなくなっちまったんだ。難民になったり、奴隷になったりでな。
何にせよ、お国がまるで国の事把握しきれなくなっちまうくらい、ひどい状態だった、ってことだ。
けど、そこにヒーローが現れる。
三國志ってな
まぁ、三国志ファンには夢のない話さ。
どの国推しても勝てないとか、物語なら金返せ、ってなるだろ。
ともあれ、そんな晋が天下を統一すると、人口は約 1600 万になった。約二倍だ。まだまだ三国志開始前にゃ届かないが、それにしたって大躍進だ。で、人口が把握できてたってのは、それだけの税収を確保できたってことでもある。
ざっと見ただけでも、三国時代の各国に比べて、はるかにリッチな国になった。ここは確実に言える。
けどこういう急成長ってな、全員に恩恵が行くわけじゃねえ。ごく一部に、どうしても集まっちまう。
今日は、そんな経緯で生まれたトンデモセレブの一人、
かれは晋の天下統一に活躍した将軍、
ある日、そんな王済の家に、武帝陛下が訪問されることになった。
皇帝陛下だぜ。そりゃもう張り切るわけさ。この国のトップセレブとしちゃ、皇帝陛下をもあっと驚かすようなおもてなしをしなきゃいけない、ってよ。
……するよな、いやな予感?
まぁよ、ほんとにひどいからな。
安心してくれ。
「ようこそお越しくださいました、陛下!」
もろ手を挙げて、大勢の側仕え、女官と共に武帝を出迎える王済。この後の事を考えると、たぶん武帝、この段階でドン引きだったとは思うんだよな。
おもてなしの会場に向かってみれば、まー何と言うか。
テーブルの上には、瑠璃の小鉢に食事が盛られてる。これは贅沢っちゃ贅沢だが、まだギリギリ許容範囲だろう。問題はこっから先だ。
テーブルの横に居並ぶ、豪華な着物を着た美人の女官たち。彼女らの手の上に、ちょこん、と料理を乗せてるんだ。女官の手だぜ、たいして大きくないし、ましてやこぼさないで済むような量なんざ高が知れてる。
だから、その量は人数でカバーする。
究極の贅沢ってやつは、モノ、じゃなくてヒト、になってくるのかねえ。
とは言え、武帝は武帝で後宮に一万人の美女を囲い込んだって言われてる皇帝だ。都合二十八人の息子を作ったりもしてる。娘の数は不明。なんで、この辺のやり口にはそれなりに耐性があったのかもしれない。だから、ここまでは何とか耐えられた、のかも。
やがて、メインディッシュが運ばれてきた。プリプリの豚肉だ。切り分け、武帝に提供される。これがまた、美味い。世界中の珍味を知るはずの武帝が唸るくらいだ、よほどだったんだろう。
「王済! この豚は素晴らしいな! どのような豚なのだ?」
すると自信満々のツラで、王済が答えた。
「はい! 小さな頃から人の乳をやって育ててまいりました!」
「は?」
武帝、箸が止まった。
いろいろツッコミは浮かんだんだと思うんだ。なんでそんな発想になるんだ? とか、人間の一部を食わせたよーな豚なんざ間接的に人間食ってるようなもんじゃないか? とか。現代の倫理に沿って考えようとしたんだが、あまりにも発想が異次元すぎて検討のしようがなかった。
武帝、速やかに箸を置き、王済の家から退出した。王済としちゃ何がなんだかわかんなかったろうが、まぁ、仕方ない。
なお後日、武帝の後継者選びにまつわる問題で、王済は武帝の不興を買い、罷免されている。
表向きは武帝の気に障る献策をしたからだってことになってるが……なんつうか、なぁ?
解説
https://kakuyomu.jp/works/1177354054893915600/episodes/1177354054893915733
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