解説:劉佩玉と、鏡台と。
カクヨムコンテスト作品、
テーマ「シチュエーションラブコメ」。
は!?
いや、どんなラブコメもなんらかのシチュエーションに当てはまんない!? 何なの、それ宇宙語!? わかんない!
と言う訳で、開き直って「ただのラブコメ」で行くことにしました。何らかのシチュエーションに該当してる……の、かな? してないのかな? わかんないです。とりあえず
溫公喪婦,從姑劉氏,家值亂離散,唯有一女,甚有姿慧,姑以屬公覓婚。公密有自婚意,答云:「佳婿難得,但如嶠比云何?」姑云:「喪敗之餘,乞粗存活,便足慰吾餘年,何敢希汝比?」卻後少日,公報姑云:「已覓得婚處,門地粗可,婿身名宦,盡不減嶠。」因下玉鏡臺一枚。姑大喜。既婚,交禮,女以手披紗扇,撫掌大笑曰:「我固疑是老奴,果如所卜!」玉鏡臺,是公為劉越石長史,北征劉聰所得。
この辺を詳しく訳出したのが、こちら。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885740696
ただ、このエピソードを無邪気に援用するとまるでラブコメにならないんですよね。というのも、元ネタは温嶠のオッサンがストーカーまがいの執着を示してる話なので。つーかこのオッサン、いろいろフリーダムです。だから、そのまま彼のキャラで行こうとすると火傷します。そこで彼のプロフィールを普通に読んだら悲劇の人になるのをいいことに、性格改造。
ま、
なら、たぶんモテたと思うんですよね。世説新語のエピソードでも、劉氏の娘、ゲラゲラ笑いつつもまんざらでもない感じですし。
ちなみに世説新語の語る劉氏が劉琨の縁者なのかどうかを語る史料は存在していません。マジで劉氏間引きされちまえばいいのに。
あ、それと詩経秦風 兼葭。
https://chinese.hix05.com/Shikyo/shikyo142.kenka.html
より、第一連を引用させて頂きます。
兼葭蒼蒼 兼葭蒼蒼たり
白露為霜 白露霜と為る
所謂伊人 所謂
在水一方 水の一方に在り
溯洄從之 溯洄して之に從はんとすれば
道阻且長 道阻にして且つ長し
溯游從之 溯游して之に從はんとすれば
宛在水中央 宛として水の中央に在り
葦が青々と茂り、白い露が霜になった、評判のこの人は、河の向こう側に住んでいる、河の流れに逆らって訪ねたいと思っても、水路は険しくかつ長い、河の流れに従って訪ねたいと思っても、なかなか行き着かず河の中ほどでうろうろするばかり。
三連構成の詩ですが、残り二連は描写が異なる感じです。例えば、考えようによっては「師として仰ぎ見るべき人、その、到達点」を「伊の人」になぞらえ、その学術的探究の前途茫洋なるを歌った詩、という風にもみれます。儒者たちはどんな詩でも大体教訓とか風刺的に読みたがる傾向があったらしいので――意識高いですねハハハ――、ここでもいくらでも意識高い解釈は展開できそうです。とりあえず、意識低いぼくはできるだけコミック的に面白い解釈で楽しみたいなって思います。
参考資料
世説新語
言語36
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885807660
假譎9
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885740696
詩経国風 秦風:兼葭
https://chinese.hix05.com/Shikyo/shikyo142.kenka.html
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