劉聡 温嶠の後妻探し
匈奴漢
一方、温嶠さんのおばの
戦乱により一家離散の
憂き目に遭い、娘が一人いるのみだった。
温嶠、この子を後妻にと狙っていた。
何せ、めっちゃかわいい。
そんなことも知らず、伯母は温嶠に聞く。
この子に良い嫁ぎ先はないものか、と。
神妙に温嶠さんが言う。
「うーん、良い婿は
なかなか得難いものですからなあ。
せや! ぼくなんてどうでしょう」
言い切りおった。
おば氏、びっくりである。
「戦乱から何とか生き延びたこの身です。
その日を過ごせれば、それでいいのよ。
だというのに、なぜ貴方のような
大物に嫁がせようというのでしょう」
ロリコンかよてめえ、
と言う心の声が聞こえてきそうである。
一旦は身を引く温嶠さん、
しかし諦めきれない。
そこで、見事な鏡台を贈り、言う。
「いい婿、見つかりましたよ!
門地も悪くないですし、
何よりこの温嶠に見劣りせぬ
名声、官位の者です。
この鏡台は、その者からの
結納の品です」
鏡台の見事さに、おば氏は大喜び。
こうして婚約が成立、
いざ結婚式、となった。
ここで初めておば氏と娘、婿殿と会う。
そして娘氏、手を叩いて爆笑である。
「溫嶠じぃじ、私、これ絶対に
あなただと思っていましたわ!」
そうですよねー。
温嶠さん自身なら、温嶠さんに
見劣りするはずがありません。
オンキョウサン、ウソツイテナイ。
ちなみに鏡台は、
まだ温嶠が
劉聡と戦って得た戦利品だった、とさ。
溫公喪婦,從姑劉氏,家值亂離散,唯有一女,甚有姿慧,姑以屬公覓婚。公密有自婚意,答云:「佳壻難得,但如嶠比云何?」姑云:「喪敗之餘,乞粗存活,便足慰吾餘年,何敢希汝比?」卻後少日,公報姑云:「已覓得婚處,門地粗可,壻身名宦,盡不減嶠。」因下玉鏡臺一枚。姑大喜。既婚,交禮,女以手披紗扇,撫掌大笑曰:「我固疑是老奴,果如所卜!」玉鏡臺,是公為劉越石長史,北征劉聰所得。
溫公は婦を喪う。從姑の劉氏が家は亂に值いて離散し、唯だ一女の有るのみ。甚だ姿に慧有り。姑は以て公に屬し婚を覓めしむ。公は密かに自ら婚せるの意有せば、答えて云えらく「佳き壻は得難し。但だ嶠が比きは云何?」と。姑は云えらく「喪敗の餘、粗ぼ存活せるを乞わば、便ち慰むに足る。吾が餘年に、何ぞ敢えて汝の比きを希んか?」と。卻ける後、少しくの日にして公は姑に報じて云えらく「已に婚處を覓め得たり。門地は粗ぼ可にして、壻が身名、宦は盡く嶠に減さじ」と。因りて玉鏡の臺を一枚下す。姑は大いに喜び、既にして婚す。交禮にて、女は手を以て紗扇を披き、撫掌を撫して大いに笑いて曰く「我れ、固より是が老奴と疑う。果たして卜える所が如し」と。玉鏡の臺は、是れ公の劉越石が長史為りしに、北征し劉聰より得たる所なり。
(假譎9)
劉聡
匈奴漢を起こした
ひでえ。劉聡一瞬しか出てきてねえ。
いいけど。
ちなみに溫嶠さんの享年四十二。
呼ばれるのか、それで……じぃじ、と……
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