王導3 温嶠の渡江
遺言の如き使いを立てた。
それが、
この頃
統治システムも整ってはいなかった。
住み慣れた地を離れての新生活であるが、
どうしても温嶠の胸中には、
重くわだかまったものがある。
「陛下は匈奴に連行され、
宮殿は焼き尽くされました。
代々の皇帝が眠る墓所も
手酷く損壊され、今となっては
整備する者もありません」
忠烈の徒である温嶠。
語るだに悔し涙を留め切れない。
それを見て、王導もまた泣いた。
ひとしきりの思いを打ち明けると、
温嶠は王導への重々の協力を申し出る。
そして王導も、これを受け入れる。
退出ののち、温嶠は感嘆した。
「ここにも
ならば、何を憂えることがあろう」
溫嶠初為劉琨使來過江。于時江左營建始爾,綱紀未舉。溫新至,深有諸慮。既詣王丞相,陳主上幽越,社稷焚滅,山陵夷毀之酷,有黍離之痛。溫忠慨深烈,言與泗俱,丞相亦與之對泣。敘情既畢,便深自陳結,丞相亦厚相酬納。既出,懽然言曰:「江左自有管夷吾,此復何憂?」
溫嶠は初にして劉琨の使と為り、來たりて江を過ぐ。時に江左にて營の建つるは始まれど、爾して綱紀は未だ舉がらず。溫は新たに至り、深く諸もろの慮れる有り。既にして王丞相を詣でて陳ぶるらく「主上は幽越し、社稷は焚滅せらる。山陵にては夷毀の酷、黍離の痛有り」と。溫は忠慨深烈にして、言と泗を俱とす。丞相は亦た之に對し泣く。敘情の既にして畢わるや、便ち深く自ら結ばんと陳ぶ。丞相は亦た厚く相い酬納す。既にして出でるに、懽然として言いて曰く「江左にては自ら管夷吾有り、此れ復た何をか憂えんか?」と。
(言語36)
ここでの温嶠めっちゃかっけぇんですが、落ち着くとだんだんフリーダムになってくんですよね……手腕もあってツッコミどころを残すのも忘れないとか、ちょっとこのひと完璧超人すぎませんかね……。
この時代、四十代での死亡は割と普通。けど王導が六十すぎまで生きてたことを思うと、彼にももうちょっと長生きしてもらえてたらなー、とは思う。
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