王導2  楚囚の宴会   

永嘉えいかの乱ののち、東晋とうしん朝がなった頃のこと。


良く晴れた日に、人々は新亭しんていにまで出向き、

むしろを敷いては宴会を開いていた。


そのような中、周顗しゅうぎが言う。


「風や空は中原と何ら変わらぬというに、

 山河の面持ちの、何と違う事よ」


場が静まり返る。

そして、皆々が悲嘆にくれる。


失われた「大いなる土地」への悲しみ。

それは、忠孝を示す、

と言う意味でもある。


だがその中で、王導おうどうは、

ひとり厳粛な面持ちを描く。


「皇帝陛下のもと、団結して力を尽くし、

 中原を回復せねばならん。


 我々はこのの地で鬱々と、

 お互いの顔色を見合っておるままで

 良いのであろうか?」




過江諸人,每至美日,輒相邀新亭,藉卉飲宴。周侯中坐而嘆曰:「風景不殊,正自有山河之異。」皆相視流涕,唯王丞相愀然變色曰:「當共戮力王室,克復神州,何至作楚囚相對邪?」


江を過れる諸人は美日の至れる每、輒ち新亭に相邀いて、卉を藉き、飲宴す。周侯は中坐し、嘆じて曰く「風景にては殊ならざるに、正に自ら山河に異有り」と。皆な相い視ては流涕す。唯だ王丞相は愀然として色を變じて曰く「當に力を王室と共に戮し、神州を克復せん。何ぞ楚囚と作し、相い對せるに至らんや?」と。


(言語31)




東晋朝は戦国時代で言う楚のエリア。その地で逼塞している、だから楚囚。


つーか。


そう思うなら、のうのうと宴会開いてんじゃネーヨ。

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