第2話 それは多分俺たちの仕事じゃない
どうしてこうなったのか未だに理解が追いつかない。何故…
「何故俺の机がお悩み相談窓口になってんだあぁぁぁぁ!!」
遡る事一日前…
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「お前らが学級委員長と副学級委員長か…」
「ま、まぁ」
「はい!」
担任の前田に呼び出され俺たちは職員室にいる。
10分前、俺はついさっき学級委員長とか言う重役を任された被害者になった。いや、完全にハメられたぜ
「あー、お前らには学級内の仕事や治安維持を受け持って貰う」
果たしてそれは俺達の仕事なのか?副学級委員長が美少女じゃなかったら俺一回死んで異世界転生するつもりだったんだけど。
「良かったな?学級のお役に立てて!ハッハッハァ!」
何がハッハッハァ!だよ。俺こんな柄じゃなかったはずだけど?中学の時お国のために戦った過去もなければ学級内ハーレムを築いた記憶もない。本当に何が嬉しいんだか…
「はい!凄くやり甲斐のある仕事ができて凄く嬉しいです!」
うん!僕もそう思っていたよハニー!委員長マジ最高!
「取り敢えずこの日誌書き上げてたまーに生徒の話でも聞いてやれ。特にお前は入学式の時出遅れていたみたいだからラッキーだろう?」
「余計なお世話っすよ!」
前田はケラケラ笑って俺達の背中を押した
「まぁ頑張れや!案外楽しいかも知んねぇぞ?」
「はい!」「う、うい…」
俺達は職員室を後にした。
桜木が「ねぇ」と、俺には話しかけてくれたから俺は約0.2秒で即一番カッコイイであろうキメ顔で返事を返した。
「沢田君って面白いね!ふふっ」
ウケは良かったらしい…ウケは。
「前田先生って怖いイメージしか無かったけど意外とテンション高めだよねー」
「あー、うん。それな!」
「学級委員頑張ろうね?」
「あー、うん。それな!」
「あのー、沢田君?大丈夫?」
「あー、うん、それ…すみません。」
いかんいかん、別に顔に見とれて話を無視していた訳じゃない!断じてない!まぁ、全くそういう訳じゃないかも知れなくは無きにしも非非ず☆って、何を考えている俺!
俺は何か言い訳を考えようとしていた訳じゃないが天井のシミを数えていると桜木が発言した。
「もしかして…緊張してる?」
「へっ?!」
流石に美少女を見て興奮していたのがバレたのか?そんなの普通に学校生活終了の危機なんだけど。
「いやー、重役をすることになったから緊張してるのかと思っちゃったよ。」
あぁ、そっちでよかった!
「そ!そうそう!本当ビックリしちゃったよ俺が学級委員長とかね!」
嘘は付いていない。自分が重役に向いていないことにも皆から学級委員長に投票されたことにも。神様はどう見ているのかは知らんがこの様な残酷な運命を与えた神はけしからんとも思っている。神め!許すまじぃ…
などと茶番を重ねている内に急に尿意を感じた俺は桜木さんに申告した。
「ごめん!トイレ行きたいから先戻っといて!」
「待っとくよ?」
「そう?じゃあごめん!」
俺は桜木さんをその場に待機させるとスマホを取り出し時計を見た。時刻はもう午前の授業の半分を終えようとしている。この時間はトイレが混雑するため、俺は一際目立たない体育館への渡り廊下付近に設置されている生徒用トイレに駆け込んだ。
「…ふぅ、この時間はここが一番だな。間に合って助かったぁ」
すると、廊下から他者の声が聞こえてきた。
「ねぇ、ちゃんと持ってきてるよね?」
「う、うん…でも今日で最後だよ?」
「わぁーってるわぁーってる!おぉ、流石!俺達は友達だもんな?」
「…」
そうか、一際目立たないってのはそういった事も有り得るのか。俺は喧嘩番長じゃないしこの場に出て来て「弱いものいじめは辞めろ!」などとベタな台詞を言える程の勇気は無い。ん?良く聞いたらこれ片方はうちのクラスで聞き覚えのある声だ。もう片方は知らない。会話終わらせて早くどっか行ってくれねぇかな…
そんな事を考えていると俺の憧れの美声がカツアゲの会話に割って入った。
「君達!それは立派な校則違反だ!」
「あぁ?ほぉ、これはこれは今年特待生で期待のルーキーって言う桜木ちゃんじゃないですか?」
おいおい!何やってんだよ桜木さん、それは絶対に俺達の仕事の枠から外れてるし風紀員にでも任せておけば良いのに!
「山上君!大丈夫?」
「どうして来たの?!ダメだよここに居ちゃマズイよ!」
「わりーけど俺コイツに用があるんだわ。って事だから…」
パーン!!
絶対に女子がスカートの中身を見られた時に男子に行うあれが炸裂した時の音が響いた。
「先に手ぇ出したのはそっちだからな?」
これは完全にマズイことになってきた。この口調からして次は敵側の攻撃だ。
「正当防衛ぃー!正当防衛ぃー!!」
クッソ!美少女の顔に傷は付けられん!
「おい!」
「あぁ?誰だテメェ?」
「沢田くん?!なんでここのトイレにいるの?」
逆に何であんたがここにいんだよ!ってこの人先輩じゃん!やべぇの、相手にしたな桜木さん!
二年のThe不良みたいな先輩だったから一瞬で思い出せた。
「暴力は何も産まないと思いますけど…」
「るせぇ!俺は正当防衛で忙しいんだよ!」
そう言って先輩の振り下ろした拳が桜木さんに直撃…
「させねぇよぉ!!」
反射的に俺は桜木さんを押し倒して直撃を防いだ。
つか女子に容赦なさすぎだろ…
「え、えぇっと…」
うん、顔を赤く染めた桜木さんも可愛ええなぁ〜。じゃねぇだろ!セクハラだろこれ!
「ごめん!そう言った下心は全くもって無いんだよ!」
「あ、うん。分かってるよ?私を守ってくれたんだよね!」
天使で助かった。おかげでめっちゃ元気出た。
「あと、これお願い!」
「え?携帯?!」
俺は桜木さんに自分のスマホを渡して手短に作戦の指示を出した。
「さてと、先輩かかってきてくださいよ?」
「そんなに足プルプルさせて何言ってんだよお前」
推測くそヤリチン野郎は笑いながら俺の足を指さして言った。
正直俺にも勝算は低いが考えはある。幼い頃からボクシングをやらされてきたが一度も人に拳を当てたことがない。だが…
「降りかかる火の粉は払わなきゃだなぁ!」
拳が俺にすごいスピードで接近して来る。
サッ!
きた!俺の勝ちだ
「は?」
拳を紙一重で、交わした俺を見て先輩は目を白黒させる。
「先輩ぁーい!これなんすか?」
「そ!それ俺の煙草!てめぇ」
「そんな無防備にポケットに突っ込んでると誰かに取られちゃうかもしれませんよ?」
俺は自分の手の中にある煙草をカラカラと降って見せた。
「てめぇ!返しやがれ!」
「そこまでよ!」
次に出てきたのは俺のスマホを持った桜木さんだ
「今の一部始終を動画で撮らせてもらっていたわ。」
「TheENDおぶ先輩…なんつって」
正直言って性格の悪いかち方だったが攻撃はかわすことしか出来ない俺にはこれしか無かった。
「チッ!悪かった。もう行っていい、だからこの事は…」
「ダメよ、全額返済しなさい。」
「わ、分かった!だからこの事は…」
「悪いがそれは難しい相談だな」
凄く怖い声が聞こえてきた。
「前田先生!」「先生?!」
「げっ!」
「あぁ、お前らが大好きな生活指導の前田だ!新学級委員共!後は任せておけ。」
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なんて出来事があったもんで学級委員長で留まるどころか俺達ふたりは学級委員を辞めさせられた。この文章完全に変だけとまぁ、聞いてくれ。本来なら大喜びするところだが、そんなことは俺に許されない。
その後、俺達の賞賛が認められ風紀員にぶち込まれる始末に終わってしまった。人助けなんてするもんじゃねぇ。あぁ、不幸だ
桜木さんめっちゃ喜んでるし…
「私、沢田くんと風紀員になれて嬉しいな!…凄く」
最後に何かボソッと聞こえたが何を言ったのかはわからん。
うん!僕もうれちぃ!
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「お前らあのカツアゲで有名な先輩を成敗したって本当かよ?!」
「凄い!それで風紀員になったってのも本当?」
「おいおい!それマジ?」
あぁ、俺の青春はどうなっていくのだろうか…
「頑張ろうね、沢田君!!」
俺の青春はタチが悪すぎる とら @taitaro
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