俺の青春はタチが悪すぎる

とら

第1話 皆酷くね?

俺は高校に入学してから一週間たった4月15日を迎えた。教室はもう既にグループまで完成している発展途上国にクラスチェンジしていた。

よく1週間も耐えれたわ俺。

俺にはこれまで友達さえろくに作ったことなどないと言う実績を積んでいる!さぁ、どっからでもかかって来やがれ俺はいつでもwelcomeだぜ!!

とか心の中で叫びつつ皆に期待の眼差しを向けてみた。

まぁ、当然自慢のルックスの悪さに近寄ってこようとしない。あぁ、胃が痛い。


「えと、沢田さん?」


机の上で俯いていた俺に顔面偏差値Sランクであること間違いなしの美声が俺の半径1m以内から名前を呼んでくるのが聞こえた。

誰だよ沢田さん。羨ましいなちくしょう!…待てよ?沢田って俺じゃね?


「ふぁい!」

うん、ミスった。コミュ力皆無が急に声をかけられるとこのような返事になってしまうのだろうか。いや、これはちがう。あれだよ、条件反射ってやつだよ。きっと俺が100人いても同じ行動をとるよきっと!

顔を上げるとそこには入学してわずか3日で学級内カーストトップのヒロインの座を勝ち取った清楚系女子「桜木 百花」が満面の笑みで俺に話しかけてきた。

告白か?告白なのか?仕方ねぇな、見た目よし!性格は…って、何を考えてんだ俺は。死ねよ!俺死ねよ!


「今日君が日直だよね?」

「え?あ、あぁ!そっかありがとう」

と、要件済んだらバイバイだよな。サラバ美少女!あぁ、次の日直の時も机で寝とこう。


「そう言えば沢田くんとお喋りしたことなかったよね?」

「!」

嘘だろ…沢田に君付けだと?!そしてお喋りだと?!この女は俺からいくら請求するつもりだ?財布の中身入ってたかな…


「君付けて呼んでも良いかな?」

「あんまりお金無いんすよ…」

「え?」

どうやら会話は噛み合っていないらしい。俺の文章の何処におかしな言葉があったのだろうか?


「お金?え!お金?!ちょっと何の話?」

間違いない。この女は無害だ。めっちゃ戸惑ってんじゃん。


「ごめん!なんでもねぇ。お喋りだよな!何話そっか?」

「そーだね!沢田くんはどっから来たの?」

「お、俺は鳥取から…こっちには親父の実家があるんだ。」

「と、鳥取?!凄く遠いね。私新潟からこっちに来たの。やっぱり東京は都会だね〜」

ヤバい、めっちゃ感動してるよ?女子との会話超楽しい。えへへへ

いかんいかん。顔に出る癖は直しておかねば。

これまでの学校生活リア充爆発と思い続けてきたが別の感情を得ることが出来た気がする。さぁ!沢山お喋りをしましょうじゃないか!

と、テンションが頂点に達しようとした瞬間教室の扉がガラッ!と開いて担任教師の前田が入ってきた。


「ホームルーム始めんぞ。お前ら席つけや」

この先生めっちゃ怖ぇよ。これ本当に女性かよ…俺と百花様の会話を邪魔した罪は重いぞ!

俺が前田を睨み付けた瞬間恐ろしい視線の圧力でねじ伏せられた。


「チッ!これが世界の残酷さか…」

「あはは…またね?」

桜木百花と別れを告げた。辛い


「あー、これから係を決めてもらう。まずは学級委員長からだ。」

これだけは絶対にやりたくねぇ。きっと押し付けあいが始まるだろうな。俺みたいなのは保健委員にでも入って安定したポジションを…


「お前らで勝手に決めとけ、私は用があるから職員室にいる。」

丸投げだが、これで指名されてうっかり学級委員長なんてことは無くなった。


「皆ー、投票制がいいよね?」

クラスの何処かで誰かが発した言葉に全員賛成した。

もちろん俺も大賛成だ。投票制なら俺に投票してくる奴なんていないからだ!悪いがお勤めごめんだ


「ねぇ百花、あんた誰に投票するの」

「私沢田くんに、投票しようと思うの。」

「百花さん、沢田って子に入れるの?じゃあ俺も!」

「私も!」

「僕もー」

そんな声が聞こえてきた。

そうかそうか、哀れな沢田君よ…君が選ばれてしまったんだね。頑張りたまえ!

ん?

一連の会話が頭をループしまくる。

沢田くん?川田くん?あぁ、川田君だな!…

川田って誰だよ!

聞き間違いが無ければ今すぐ転校したい。

どんどん箱の中に投票用紙が吸い込まれていく…

俺は存在しない「川田君」とか言う意味のわからない名前を書いて箱に突っ込んだ。


「えー、川田君1票」

「は?川田君って誰?」

クラスがざわつき出した。

皆川田君の話してたんじゃないの?


「えっと、沢田くん39票!」

…皆酷くね?








その後、桜木百花が副委員長に立候補したため大喜びで引き受けた沢田であった。

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