第5話 少年
やはり遺伝子は同じのようで、アレクとレイは15歳になる頃には180cmほどまで背が伸びた。アレクとレイの身長に差はないが、成人男性の平均は170cm程なので少し大きめだ。
依然としてレイのレベルは1のまま。体格は細身の筋肉質、ある程度の強化にも耐えられる身体になった。どうやら、無属性魔法の強化に体を慣らす訓練というのは必然的に筋力がつくらしく、また、筋トレをするよりも綺麗に、効率的につくことがわかった。
レベルがあるこの世界で筋肉トレーニングという概念は存在しない。レベルさえ上げればすべて事足りるからだ。レベルを上げることで自然に筋肉はある程度つく。
そのため、しばしば変な人と思われることもあったなあ、と独りで苦笑いをする。
アレクはここ2、3年で急速にレベルアップし、既にレベル25と成人男性の平均程度を少し上回るほどまで成長した。
しかし、歪んだ精神は直らず、人を見下した態度はそのままだ。
今年、アレクが見事、騎士育成学校入学選抜で合格したことも彼をさらに傲慢にする原因となったのかもしれない。
選抜試験は受験者が多く、この分倍率もかなり高い。
騎士には一般募集もあるが、騎士幹部のほとんどが騎士学校出身だ。
レイは、アレクが騎士学校に入学するのを期に、自分も冒険者という職業に就くことにした。
正直、早く一人立ちしたいというのはあって、アレクの入学は良い機会になった。
同時にやはり、不安でもある。これまで自分を信じて、ときには現実逃避すらしてまでも、自信を鍛えてきた。
だからこそ、本当に自分の努力は正しかったのか、不安なのだ。
「まあ、どうにでもなるか。そのために商人の勉強もしてきたし」
しかし、それも想定済み。もともと確証があることでないのだ。後があると、思うと気が楽になる。それに、今まで培ってきたものは必ず役に立つ…と思う。
それにしても、先がわからないのに何年も努力するのは僕もかなりの自信家だな、と思った。
今思えば、兄弟仲は最悪だったけど、お互いを高め合えるという意味では良かったと思った。もっとも、向こうはこちらを舐めきっているけれど。
実際戦っても十中八九僕が負けるだろう。
しかし、それはそれ。正直、この家にはそろそろ居心地が悪いと感じていた。
何事にも基本兄を優先される。無下にされているわけではないが、曖昧な疎外感が確かにあった。
それに、もともと決めていたことでもある。
レベル概念の理論を公表するつもりはない。
宗教が元になっているレベル概念を唱えれば、異端者として追放される可能性がある。というより、確実にそうなるだろう。
だから僕は、自由に冒険者をやると決めた。冒険者は非常に夢のある職業として知られている。
実力至上主義で、独立組織であるため、国からの圧力を受けることなく回っている。
冒険者という職業は、世界的に効力を誇る身分証にもなるため、本当に便利でもあるのだ。
そんな訳で、僕は冒険者に、兄は騎士になることとなった。
そうして、時間が過ぎた。アレクはもうすぐ入学式とのことだが、僕は一足先に冒険者になるために、辺境都市ガルバドに行くことにした。別名、迷宮都市。
魔物の出現が多い辺境には、質の良い冒険者が多いと聞く。
王都など、比較的安全な所とは違い、そこにはダンジョンが多く存在する。
そのため、魔物相手と戦うことが多いからだ。
また、ダンジョンの魔物は、倒すとアイテムを落とすらしく、それにより王都と遜色ないほど栄えているらしい。
だが、それにしたがって危険度も高くなる。冒険者のランク昇格は他よりも難易度は厳しいらしいのでランクを上げたいものは王都へ。
実力も上げたいものは辺境へ行くのが常識で定石だ。
結果、王都に向かうアレクとは、逆の方向へ歩むことになった。もしかしたら、もう会うこともないかもしれない。
しかし、まずはレベルを上げなければ話にならないだろう。
確か、冒険者にはなれてもダンジョンに潜るにはランクを上げなければならなかったはずだ。
ランクを上げるには、月一の戦闘試験で、上位ランク冒険者と戦い実力を認められれば良いはずだが、レベル一がどう筋トレしたところで高レベル者には太刀打ちできないだろう。
というわけで、まずはレベル上げだ。
と、意気込んでいると
「ちょっと、話があるんだけど…」
リーナとテレサが家を訪ねてきた。
レベルを上げる前にすべきこと! rrri @rrri
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